胸郭運動の3次元解析
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概要
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【はじめに】呼吸器疾患について呼吸法の獲得は重要である。臨床の場面では横隔膜呼吸や口すぼめ呼吸の獲得がよく使われている。しかし、口すぼめ呼吸のほうが容易に獲得することができ、時折横隔膜呼吸の獲得に難渋する場合を経験する。そこで横隔膜呼吸と口すぼめ呼吸の胸郭の動きを3次元動作解析することで、それぞれの呼吸方法が胸郭の呼吸運動に与える影響を解析し、考察を加えて報告する。【対象と測定方法】健常男子6名、年齢22歳、身長173±1.68cm、体重63.6±8.5kgであった。3次元解析装置ELITE plus(MEDIX社製)を用いて安静時呼吸、口すぼめ呼吸、横隔膜呼吸時の胸郭運動を分析した。反射マーカは左右の烏口突起の内側(I)、第6肋骨弓(II)、第10肋骨弓(III)の計6箇所に着けた。そして各呼吸様式をランダムに行い、各3回測定しマーカの移動距離を前額面上と水平面上で比較した。また、測定姿勢は45度半仰臥位と座位の2姿勢とした。【結果と考察】45度半仰臥位での前額面上の各測定部位の移動距離は安静時呼吸I6.49±2.45mm、II5.74±2.06mm、III7.3±1.83mm。横隔膜呼吸ではIII7.78±2.79mmと著明に動いていた。口すぼめ呼吸ではI7.9±2.98mm、III8.63±3.24mmが著明に動いていた。また水平面上では横隔膜呼吸ではIII7.77±2.83mmであった。口すぼめ呼吸ではI8.28±2.7mm、III9.05±2.26mmと著明に動いていた。また、座位での前額面上の移動距離は安静時呼吸がI7.08±2.26mm,II5.92±2.13mm,III8.03±2.55mmであった。横隔膜呼吸ではIII9.52±3.73mmと著明に動いていた。また、口すぼめ呼吸ではI10.45±3.64mmとIII10.23±3.83mmと著明に動いていた。水平面上でも横隔膜呼吸時のIII9.93±3.36mm。口すぼめ呼吸時のI10.43±3.74mm,III10.77±4.04mmと著明に動いていた。横隔膜呼吸では姿勢を変化させても下位肋骨の動きがよく動いている。これは横隔膜の起止部が下位肋骨にあるために大きく下位肋骨を動かしていると考える。また、同様に口すぼめ呼吸でも姿勢による上位肋骨と下位肋骨の胸郭の移動距離に変化はない。また、上位肋骨が他の呼吸法に比べて著明に増加している。これは呼気時に口をすぼめることによって呼気時間の延長を促した結果、一回換気量の増大と、呼気流速を増大させ胸郭内を有意に陰圧にすることにより換気効率を増大させていると考えられる、そのため強制換気のように呼吸補助筋を有意に使っての換気効率を上げるよりも、容易に換気効率を増大することが可能になると考える。また肺実質の器質的変化によって横隔膜の動きを阻害するような疾患に対して、横隔膜呼吸の獲得を優先するよりは、口すぼめ呼吸のほうがより容易に呼吸法の獲得をすることができ、しかも効果的であると考える。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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