当センターにおける呼吸外来の臨床報告
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概要
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呼吸障害は約30年以上重症障害児の死因の第1位である。近年在宅の重症児が著しく増加する中で、重度呼吸障害を伴う在宅例も増加しており、呼吸障害の管理が外来療育での大きな課題となってきた。このような状況を背景として当センターでは一昨年より医師,看護師,理学療法士による呼吸外来を開設した。2年間の継続結果を報告する。構成と内容:小児科医1名理学療法士2名看護師2から3名のチーム体制で隔週の半日間予約制で呼吸障害児の評価と治療を施行。呼吸療法内容は非侵襲的方法による人工呼吸器・呼吸補助装置の早期導入と指導管理、蘇生バックやインエクスサフレーターによる陽圧換気療法、呼吸理学療法、ポジショニング、呼吸看護などで、必要に応じ選択。評価項目は呼吸数・呼吸パターン・聴視診の理学的所見、経皮的動脈血酸素飽和度、経皮的二酸化炭素分圧、呼気終末二酸化炭素分圧(EtCO<SUB>2</SUB>)、一回換気量(TV)、最大呼吸流速、スパイロメーターによる換気力学的検査を対象に応じ選択。必要に応じ胸部CT、CRP値の経時的変化も検査・評価。対象:2000年9月から2年間、延べ247例(全59例)を評価・治療。疾患内訳:筋ジストロフィー20例(福山10DMD5Ulrich4FSH1)、脳性麻痺16例、先天性ミオパチー5例、難治てんかん4例、脊髄性筋萎縮症(SMA)4例(I型1 II型3)その他10例。平均年齢13歳(2から52歳)。総括方法_丸1_呼吸療法前後で対象に施行できた全てのTV変化_丸2_同様に全EtCO<SUB>2</SUB>変化_丸3_下気道感染罹患や入院歴を調査。呼吸外来開始後6ヶ月以上呼吸器感染入院がなく感染罹患が激減した例を著効、同様に入院と罹患減少を改善、同様に不変を維持、増加を無効とし4段階に分類。結果_丸1_呼吸療法前後でTVの測定総回数は193回。その内呼吸療法前に比べ療法後に上昇を示したのは101回(52%)不変61回(32%)下降31回(16%)。呼吸外来初診時にTV測定可能だった49例の内上昇が38例(78%)不変7例(14%)低下4例(8%)。_丸2_呼吸療法前後のEtCO<SUB>2</SUB>総測定回数は186回。その内呼吸療法前に比べ療法後の上昇は17回(9%)、不変136回(73%)、下降33回(18%)。不変136回の内CO<SUB>2</SUB>が45Torr以上4回(3%)45Torr未満132回(97%)。CO<SUB>2</SUB>が45Torr以上で施行した総回数15回の内下降10回(67%)不変4回(27%)上昇1回(6%)。_丸3_治療開始前に下気道感染を反復していた例で、下気道感染罹患入院の4段階分類は著効2例、改善9例、維持12例、無効5例(無効例中重篤な症状のSMA IIが2例)。考察:TVの呼吸療法前後の比較では、初診で療法後にTVは上昇傾向にあった。EtCO<SUB>2</SUB>では、不変136回の内45Torr未満は97%(132回)。132回の内陽圧換気療法施行が129回。これより陽圧換気療法が過換気・呼吸抑制なしに安全な施行であることが確証される。CO<SUB>2</SUB>が45Torr以上の中で下降は67%あり、呼吸療法が炭酸ガス排出に有効なことが窺えた。原疾患の進行が早く重篤な症状を呈する例では下気道感染の防止には無効の傾向があるが、それ以外の例では原疾患が進行性であっても、今回のような評価・治療が下気道感染の防止・軽減のためにも有効である。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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