多施設間無作為化比較対照試験による脳血管障害後片麻痺に対するバランス介入効果 第1次集計報告
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概要
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<目的>科学的根拠に基づく理学療法が推奨される中で、特に回復過程にある脳血管障害後片麻痺(以下:片麻痺)に対する介入効果を検証することは重要な課題である。 本研究では、多施設間の無作為化割付比較対照試験(RCT)による片麻痺のバランス介入効果を科学的手法によって検証したので、その第1次集計結果を報告する。<方法>協力の得られた6施設に入院中の片麻痺患者のうち、上肢の支持を含めて1分以上立位保持が可能な例を対象とした。なお、介入内容を十分に理解できない高度の痴呆、純粋なパーキンソニズムおよび小脳性運動失調を呈する者は対象から除外した。 担当の理学療法士および患者に十分な説明を行い、文書で同意の得られた場合のみ研究に参加した。介入か対照かは各施設のコーディネータが封筒法またはカルテ番号により無作為に割付け、担当理学療法士に選択権はなかった。 介入は、通常の理学療法に加えて1日1回15分のバランス練習を2週間実施した。介入内容は、不安定な足底面(フォームラバー)上での立位で、姿勢保持、リーチ、外乱応答、随意運動を行った。対照群は、足底を接地した座位で、姿勢保持、リーチ、外乱応答、随意運動を同じ期間実施した。 評価は、介入前、介入2週後、4週後に実施した。評価者は他施設から派遣された理学療法士が行い、評価者は対象者が介入群か対照群であるのかがわからないようにした(盲検)。評価項目は、床面上およびフォームラバー上での開閉眼時の立位保持時間、TUG(3m最速)、FAC(歩行自立度)、10m最速歩行時間(歩行速度、重複歩距離、ケイデンスを算出)、FMS(機能的動作尺度)とした。また、麻痺側、発症からの期間、病巣、合併症、補装具の使用状況および関節可動域、麻痺機能、体性感覚、視空間認知を調査した。 2週間の介入が完了して全てのデータを測定できた例を介入群と対照群に分類し、介入前の基本属性に対してカイ二乗、t検定を行い、群ごとに介入前後の平均値を対応のあるt検定で比較した。<結果および考察>抄録提出時に全てのデータが揃ったのは46例であった。そのうち介入群が26名(平均65.5歳、右麻痺10例・左麻痺16例)、対照群が22名(平均66.0歳、右麻痺11例・左麻痺11例)であった。介入前の両群間では全ての属性および歩行、FMSで有意差を認めなかったが、開眼立位保持時間は介入群で有意に低値を示した。 介入前後の平均値の比較では、対照群ではFMSと歩行速度に有意な改善を認めた。一方、介入群では、FMS、歩行速度に加えて、重複歩距離、床面上での開眼時立位保持時間、フォームラバー上での開閉眼時立位保持時間に有意な改善を認めた(p<0.05)。<結論>本結果から、回復過程にある片麻痺に対する1日15分の2週間にわたるバランス練習は、立位保持時間および重複歩距離を有意に改善させる可能性が示唆された。さらに、大数による後層別での比較検証を続ける必要がある。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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