第12肋骨の操作による歩行に与える影響
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概要
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【はじめに】我々は今まで仙腸関節の運動解析についてその方法論と測定について報告してきた。今回骨盤の動きと密接に影響する脊柱、中でも第12肋骨の動きを測定し、その可動範囲を操作し、立ち上がり歩行に至るまでの動作につき、知見を得たので報告する。【対象】対象は、第12肋骨操作群として椅子から立ち上がり、屋内歩行可能な脳卒中片麻痺患者23名(脳梗塞8例・脳出血15例、右麻痺15例・左麻痺8例、男性15名・女性8名、平均55.6±9.3歳)。対照群として、脳卒中片麻痺患者11名(男性8名・女性3名、平均48.1±11.5歳)。 【方法】1.同意の得られた健常被検者1名に安静臥位にて、呼気と吸気の移動範囲をヘリカル3D-CTにて、第12腰椎を撮影し画像を作製した。2.各対象者に安静座位から任意にスタート合図をし、椅子から立ち上がり歩行し、約45秒間・20mを測定した。測定肢は患側足部とした。測定項目は、第1歩を出すのに要する時間・その最大加速度・MAX SPEED・平均速度・各LAP TIMEである。3.その後第12肋骨の動きを、測定を参考に側臥位にて操作群に両側1回操作し、非操作群とあわせ同様の方法にて測定した。計測は、VINE社製SPEED METERでセンサーワイヤーを操作し、スピード解析ソフトに取り込み、パルス信号を数値データへ変換し解析した。統計学的分析は、対応のあるstudent-t検定を用い、有効水準は5%未満とした。【結果】1.第1歩を出すのに要する時間(min);操作群(前2.69±1.29後2.37±0.89)/非操作群(前2.69±1.05後2.29±1.07)両群とも有意に時間の短縮が見られた。(p<0.05) 2.第一歩目最大加速度(m/sec);両群とも有意差を認めなかった。 3.MAX SPEED;両群とも有意差を認めなかった。 4.平均速度(m/sec);操作群(前0.56±0.22後0.62±0.22)と有意に速くなった。(p<0.01)/非操作群は有意差を認めなかった。 5.LAP TIME(min);操作群(5m前13.93±4.97後12.06±3.28・10m前23±8.68後20.8±6.44・15m前30.2±8.22後27.09±7.02・20m前35.88±8.7後32.43±7.29)と有意に速くなった(p<0.01)。/非操作群は有意差を認めなかった。【まとめ】今回歩行において、脳卒中患者に第12肋骨の可動性の操作が動作に変化を与える因子と成り得ると考えられた。それは可動性を操作する事で、動作を移行し易くし歩行能力が量的・質的に改善し動作遂行時の必要な筋出力に影響を及ぼしたと考える。その意味で一つの効果判定をする上で、肋骨の操作は情報源になると考えられる。それは短時間で患者の随意努力収縮を求めず、歩行における効果が認められたと考える。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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