急性期での運動麻痺の重症度の違いが起居動作に及ぼす影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【はじめに】 脳血管障害患者において上下肢の運動麻痺が重度であっても起居動作が可能な患者を経験する。それらの動作は、脳血管障害患者の体幹機能の評価として挙げられる項目であるが、麻痺惻下肢の影響がどの程度関与し、起居動作能力を反映しているか疑問である。そこで今回、体幹機能を評価する項目でもある起居動作が運動麻痺の重症度の違いで変化を及ぼしているかについて検討したので報告する。【対象と方法】 2000年4月から2002年7月までの間で当院の脳血管障害評価表を用いて、発症10日以内に理学療法開始した脳血管障害患者において、理学療法終了時(転・退院時)に安静度が立位まで解除されており、重度運動麻痺(下肢Br.StageIからII)である11名(以下重度群)、平均年齢64歳、診断名(脳出血6名、脳梗塞5名)平均在院日数34.2日と同様に中等度運動麻痺(下肢Br.StageIIIからIV)である19名(以下中等度群)、平均年齢61歳、診断名(脳出血13名、脳梗塞6名)、平均在院日数37.4日を対象とした。起居動作の項目は、寝返り、起き上がり、坐位保持、立ち上がりとし、評価内容は、全介助、要介助、監視、自立の4つに分けた。分析方法は、重度群と中等度群の2群において、理学療法終了時の起居動作能力を比較した。統計処理はMann-WhitneyのU検定を使用した。【結果】 寝返り、起き上がり、立ち上がりについて2群間において有意差が認められた(p<0.05)。坐位保持は2群間において有意差は認められなかった。坐位保持では重度群は自立4例、監視4例、要介助2例、全介助1例であり、中等度群では、自立13例、監視4例、要介助1例、全介助1例であった。【考察】 起居動作項目の中で、寝返り、起き上がりは非麻痺側上下肢・体幹の影響を受ける項目であり,立ち上がりは麻痺側下肢・非麻痺側上下肢の影響を受ける。今回の結果では、重度群と中等度群において坐位以外での動作は有意差が認められ、麻痺側下肢の重症度は上記の起居動作で影響していると考えられる。坐位保持に関しては、四肢の影響は殆ど受けずに体幹機能を反映しているため、下肢運動麻痺の重症度とは関係が低いと考えられる。今回の坐位保持は静的であり、体幹機能を反映するには動的要素の必要性もあり今後検討する必要がある。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―