脳卒中片麻痺患者の非麻痺側下肢筋力と動作能力の関連
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概要
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【はじめに】我々は,第36・37回日本理学療法学術大会において脳卒中片麻痺患者の非麻痺側下肢筋力と歩行・立ち上がり・床からの立ち上がり動作の関連性について報告し,動作が自立に至るための筋力水準を明らかにしてきた.これらの追跡調査に加えて今回は,非麻痺側下肢筋力と階段昇降の動作能力との関連について調査し,動作の難易度等に関して若干の知見を得たので報告する.【対象および方法】対象は,当センターに外来通院している維持期の脳卒中片麻痺患者275名,男性174名,女性101名,平均年齢65.8歳である.なお,非麻痺側下肢に整形外科的な疾患を有する者,筋力測定時に指示動作に従えない者は対象から除外した.これらの患者の下肢Brunnstrom stage,非麻痺側膝伸展筋力,歩行・立ち上がり・床からの立ち上がり・階段動作の自立度について調査した.膝伸展筋力の測定には,アニマ社製μTas MT-1を用いた.測定肢位は坐位とし,下腿下垂位での等尺性筋力を測定した.測定は二度行い,測定値の高いものを採用した.測定値を体重で除した値を筋力体重比で示した.【結果】非麻痺側膝伸展筋力と動作自立度との関連をみると,歩行では筋力体重比が0.55,立ち上がりでは0.60,床からの立ち上がり0.70,階段昇降0.80をそれぞれ上回る場合に動作は全例自立し,これ以下であれば筋力の低下に伴い自立度は低下した.動作が複雑になるにつれ高い筋力を必要とすることが示唆された.また筋力水準は麻痺の重症度により異なり,重症例でより高い筋力を必要とした.すべての動作において,筋力体重比が0.30を下回る場合,麻痺の重症度と関係なく動作が自立した者はいなかった.【考察】今回の調査より,脳卒中片麻痺患者の動作の自立に必要な筋力の指標が明らかになり,非麻痺側の機能の重要性が伺われた.その筋力水準は動作の難易度により異なり,また麻痺の重症度とも関連していた.すべての動作において,筋力体重比が0.30を下回る場合においては,麻痺の重症度と関係なく動作が自立した者はいなかったことから,この値を下回る場合は片麻痺患者の動作自立の可能性は低いと考えられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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