回復期リハビリテーション病棟における理学療法士の係わり:本病棟開設2年半でのPTの意識変化
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概要
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【はじめに】当院は5病棟297床の脳血管障害と整形外科疾患を中心としたリハビリ専門病院である。近年の医療改革の流れに沿い平成12年5月に回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)を1病棟60床開設し、さらに平成14年の2月と7月には各1病棟60床を増設し、現在180床で運営している。回復期病棟の目的は寝たきり予防と自宅復帰促進であり、PTの役割は実用歩行の獲得を早期に図り活動を向上させることがあげられる。この回復期病棟の目的を実現するためには、従来の基底還元論的な考えを修正し、活動レベルを重視した目標指向的チームアプローチを行う新たな展開が求められている。そこで回復期病棟開設2年半の係わりを通して我々PTの意識がどう変化しているかを調査したので報告する。【対象・方法】回復期病棟に係わるPT15名に対しPTの実践に関する意識の変化について、評価、問題点、目標設定、訓練の視点からアンケート調査を行なった。15名の経験年数は5年から10年4名、2年から5年4名、2年未満7名である。なお、対象15名は回復期病棟の研修会に参加しており、PTジャーナルやOTジャーナル等に掲載された回復期病棟の文献にも必ず触れている。【結果】評価:以前は機能面にこだわっていたがADL能力に目が向くようになった(15名)。実際のADL場面や個別性のある評価が重要であると感じるようになった(8名)。問題点:機能面にかたよっていたがADL面を中心とした問題点抽出に変化した(15名)。患者の生活背景もみるようになった(3名)。目標設定:総合実施計画書に従い整理しチームで目標設定を行うようになった。また退院後の実生活を詳細に考え目標設定がより具体化した(15名)。訓練:訓練室での訓練だけではなく病棟訓練にも主体的に係わるようになった(15名)。他部署との協業を意識するようになった(6名)。 しかし、経験2年未満の者においては、能力面に目がいきすぎ機能面の評価が不十分ではないか。ADL訓練に個別性を問われるため技術面に対する不安がある。という意見もみられた。【考察】今回の調査より、回復期病棟に携わっているスタッフ全員においてプラスの意識変化が現れていた。これは協業しチームでの働きかけを通して、多くの成功事例を享受してきたからと判断する。その反面、経験の浅いスタッフは能力面を通して患者像を把握することが不十分でこれによる不安も窺える。しかしこの点については、症例を重ねることで改善していくものと思われる。 今後、平成14年5月に示された国際生活機能分類の活動レベルに対するPT技術を高め、さらなる回復期病棟の充実に向け努力していきたい。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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