変形性膝関節症に対するホームエクササイズにおける運動療法効果
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概要
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【目的】変形性膝関節症患者に対し,運動療法以外の保存療法による治療成績の停滞後に,継続的にホームエクササイズ中心に運動療法を施行した.運動療法開始後3ヶ月・6ヶ月の効果判定を目的とする.【対象】対象は,運動療法開始前2ヶ月および調査期間において処方内容が変更されなかった症例とし,脱落3例,重篤な足部変形を伴うもの2例,中枢神経障害による歩行障害を伴うもの1例を除く,17例32膝(右0左2両側15)とした.運動療法開始時年齢は72.91±5.25歳,性別は,男性1例2膝,女性16例30膝,罹患年数は13.41±9.88年であった.調査期間内の対象症例の身長,体重に関する著しい変化は認めていない.【治療内容】運動療法は,ホームエクササイズの指導,管理を行った.運動項目は,諸家の報告を参考にAnkle strategyおよび多関節連鎖の改善を目的として,8項目を選択し,STEP1からSTEP3の3段階に設定した.指導の手順は,適切な継続的遂行を目的として, STEP1から段階的に指導し,週3回以上の適切な遂行を確認した後,STEP2の運動項目を追加した.外来運動療法頻度は週1回とし,STEP3までの適切な遂行が確認された後は,月1回まで頻度を漸減し,これを継続した.他,生活上の留意事項に関して指導を行った.【研究】日本整形外科OA膝治療判定基準(以下JOA)および自覚的疼痛について,Visual Analogue Scale(以下VAS)を用い,運動療法開始前,開始後3ヶ月,6ヶ月の比較を行った.統計処理には,対応のあるT検定を用い,危険率5%未満を有意水準とした.【結果】遂行状況は,正確に行われている運動項目より分類すると開始後3ヶ月でSTEP2以上は,71.87%,遂行頻度は,週3回以上87.50%であった.調査期間に症状の増悪を認めるものはなく,運動療法開始前に比べ,開始後3ヶ月でVAS,JOA,疼痛・歩行能,疼痛・階段昇降能,屈曲角度(以上5項目p<0.001),腫脹(p=0.022)に有意に改善が認められ,開始後6ヶ月においても,この改善は有意なものであった.3ヶ月,6ヶ月の比較では,JOA,腫脹のみ有意差を認めた.また,移動に関する改善は,週3回以上行っている症例に限られ,更にSTEP2以上の内容を行われている場合,歩行,階段昇降ともに改善する傾向が認められた.【結語】ホームエクササイズが適切に行われていることを条件に,疼痛および関連する移動項目に有意に改善が認められ,エクササイズの継続により,6ヶ月後もこの改善は維持された.又,ホームエクササイズの遂行状況により,その改善の内容は差異が認められた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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