いわゆる肩関節周囲炎への超音波画像的アプローチ:上腕骨結節間溝を用いての評価
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概要
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【目的】いわゆる肩関節周囲炎はその病因の一つとして腱板と三角筋との不均衡の結果、肩甲上腕関節に不合理な動きが生じることが指摘されている。また、拘縮が出現した後の代償動作として上腕二頭筋を働かせることもあり、その病変によって二次的に疾患を助長し、病態を複雑化していることがある。そこで今回、非侵襲性である超音波画像的アプローチ(以下、エコー)で計測可能な上腕骨結節間溝(以下、結節間溝)に着目し、臨床的に結びつく特徴について検討した。【対象】肩関節周囲炎と診断された患者、29名(男性10名、平均年齢59.7±7.2歳 女性19名、平均年齢56.7±6.7歳)31肩関節(右10関節、左21関節)を対象とした。また、肩関節に現病歴、既往歴のない11名22関節(右11関節、左11関節、男性5名、平均年齢60±5.2歳 女性6名、平均年齢51.4±5.8歳)を対照群とした。【方法】上腕下垂位、肘関節屈曲90度、前腕回内外中間位でプローブを結節間溝に水平にあて、大小結節の高さが等しくなる最頂点、最低部にプロットを行った。その頂点間を幅として、両頂点を結ぶ直線から最低部までの距離を深さとして測定し、罹患側群、非罹患側群、対照群の3群間について、それぞれScheffe法で比較検討した。なお、超音波画像診断装置は、フクダ電子製UF-5500、プローブはリニア型、周波数7.5MHzを使用した。測定値の誤差については、1mm以内であった。【結果】幅、深さの平均値については、罹患側群が1.3±0.28cm、0.4±0.09cm、非罹患側群が1.2±0.2cm、0.4±0.1cm、対照群が1.3±0.27cm、0.4±0.12cmであった。また、幅、深さについて3群間に有意差は認められなかった。(P>0.05)【考察】結節間溝については性別、上腕骨頭直径に関係なく様々な形態があり、幅が広ければ上腕二頭筋腱長頭が偏位しやすく、逆に狭ければ圧迫による炎症が起きる可能性があると報告されている。今回の結果についても超音波画像診断で様々な形態が確認されたが、いわゆる肩関節周囲炎について特徴的な結節間溝は認められなかった。一方、これまでの形態学的な肩関節へのアプローチとしてはレントゲン、CT、MRI等が主であるが、今回使用したエコーについては非侵襲性だけではなく、我々、理学療法士でも取り扱いが可能であることが利点である。そこで、今回の結果より明らかな骨性要因が認められなかったが、今後、腱板等を含めた軟部組織の形態学的特徴も評価し、可動域、治療期間など臨床的な予後予測の可能性も検討していきたい。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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