脊柱後弯のある高齢者の全身のアライメントについて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】脊柱に後弯をもつ人の座位・立位における頭部の位置や骨盤、下肢のアライメントについて調査検討したので、報告する。【対象と方法】対象は、当院理学療法施行中で立位保持が可能であり、脊柱後弯のみられた患者18名(男性3名、女性15名、平均年齢87.4±5.3才、以下、後弯群)とした。対照群として健常者20名(男性5名、女性15名、平均年齢24.3±2.2才)を対象とした。正面を向いた安楽な立位および膝関節90度屈曲位の座位にて、第7頚椎棘突起(以下、C7)、後弯の最凸部(以下、頂椎)、右上前腸骨棘(以下、ASIS)、右上後腸骨棘(以下、PSIS)、右大転子、右腓骨頭を、右矢状面からデジタルビデオカメラで撮影した。1.後弯群の∠C7・頂椎・PSISの角度を脊柱後弯角度として求め、姿勢による違いを比較した。2.座位でC7・耳介から床への垂線の位置を、支持基底面であるPSISから膝蓋骨前面までの範囲を基準としてPSISからの割合を求めた。3.立位でC7・耳介・PSISから床への垂線の位置を、支持基底面である足底を基準として、踵からの割合を求めた。2,3ともに前方をプラスとした。2と3を後弯群と対照群で比較し、後弯群での特徴を確認した。また、4.後弯群については、撮影画像上より脊柱後弯角度、骨盤傾斜角度、股関節角度、膝関節角度、下腿の床に対する傾斜角度を求めて、2と3の結果と関係があるかどうか調べた。統計処理は、有意水準をp<0.01とした。【結果・考察】1.後弯群の脊柱後弯角度は、座位で平均128.6±9.5度、立位で134.2±9.0度で、姿勢による差はみられなかった。2.座位でのC7からの垂線の位置は、後弯群・対照群の順に平均17.5±8.9%、8.8±5.1%、耳介からの垂線の位置は平均33.5±7.7%、25.9±5.0%で、ともに有意差がみられた。3.立位でのC7からの垂線の位置は、同様に順に平均54.0±31.6%、-2.1±13.9%、耳介からの垂線の位置は平均107.6±34.6%、27.8±21.2%、PSISからの垂線の位置は平均-38.2±26.6%、-7.1±12.1%で、いずれも有意差がみられた。後弯群では頭部が前方にあるが、逆に骨盤はより後方に位置していることが確認できた。しかし、C7および耳介からの垂線の位置とPSISからの垂線の位置とは相関しなかった。4.後弯群では、立位でPSISからの垂線の位置と膝関節角度(r=-0.633)と股関節角度(r=-0.697)において相関がみられた。PSISがより後方に位置するほど膝関節と股関節は屈曲していた。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―