脳卒中片麻痺患者の歩行分析:歩行周期と非麻痺側下肢の関節角度との関連
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概要
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【はじめに】 脳卒中片麻痺患者の歩行分析はすでに数多く行われているが、非麻痺側の運動の特徴を述べているものは極めて少ない。そこで今回、裸足歩行の可能な脳卒中片麻痺患者に対して、歩行時の非麻痺側の歩行周期と関節角度の関係について検討した。【対象】 入院中の脳卒中片麻痺患者の男性12名で平均年齢59.3歳、対照群として健常男性4名、平均年齢53.5歳であった。患者は、10m最大歩行速度50m/min以上を速い群(6名)、50m/min以下を遅い群(6名)の2群に分けた。【方法】 三次元動作解析装置Viconとベルテック社製床反力計により3種類の速度の歩行を計測し、各被験者の歩行速度40m/min前後のデータを分析対象とした。歩行の観察項目は1)歩行周期の時間比、2)股関節、膝関節、足関節の特性点関節角度及び角度変化値とした。今回は、非麻痺側下肢と健常者下肢及び患者の2群間の比較検討を行った。 【結果】1)においては、遅い群の全例で非麻痺側の立脚期が健常群より長く、速い群は健常群と変わらなかった。2)に関しては、患者の2群ともに膝関節、足関節で健常群より小さな値を示している関節角度や角度変化値が見られた。その中で健常者群と比較して小さい値を示した者が多かったのは、2群共通で(1)立脚初期接地時膝関節屈曲角度、(2)荷重応答時屈曲角度、(3)膝関節立脚終期の最大伸展角度、(4)足関節の立脚初期接地背屈角度、(5)足関節前遊脚最大底屈角度であった。遅い群のみに関節角度や角度変化値が低下している者が多かったのは、遊脚期股関節最大屈曲角度、膝関節立脚初期接地時屈曲・荷重応答時屈曲間の角度変化値、足関節立脚期最大背屈・前遊脚期最大底屈間の角度変化値であった。 【考察】 非麻痺側下肢の立脚期の特徴に関しては、麻痺側下肢の随意性の低下により、麻痺側下肢の持ち上げ動作と、非麻痺側での片脚立ちバランスの保持のために膝関節を完全伸展に近い状態にしていると考えられる。遊脚期の特徴に関しては麻痺側下肢の立脚時間の低下により、非麻痺側下肢で早期に支持活動を要求されるために、遊脚期の関節角度が健常者より少なくなっていると考えられる。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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