回転モデルを用いたICR算出精度の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】剛体の運動を分析する方法の一つとして瞬間中心(instantaneous center of rotation: ICR)がある.近年,光学動作解析装置の開発により大量のデータ収集が可能となり,人の関節運動におけるICRの算出が試みられてきた.しかしデータ収集の改善にもかかわらず,ICR分析成果が充分に上げられていないのが現状といえる.この原因として1)生体の標点装着部位に制限がある,2)光学動作解析装置ではデータ取り込み時に誤差が生じる,3)これまで提案されたICR算出方法(Reuleax法,Spiegleman法)は2次元平面での算出方法であり,3次元上の関節運動をとらえようとする事で,データの誤差を生じる3点が考えられる.我々は,標点の動きを直線近似することでICRを算出する方法を考案した.本研究では,回帰直線によるICR算出結果と従来の方法の結果について比較検討した. 【近似直線を用いたICR算出方法】1)標点の移動を一定時間ごとに最小2乗法によって回帰式を算出する.2)隔てた2本の回帰直線(近似直線)の各中央に直行する線分を引き,線分の交点を分析対象時間におけるICRとする.【方法】直径400mmの回転板を製作し, モーター駆動で0.5Hzに回転させた.回転盤軸は実験空間のY軸に直行するよう設置した.回転板上に以下3点の直径20mmのマーカーを貼り付けた.A:回転の中心,B:回転板の外側縁,C:中心とA点を結ぶ線上100mm中心より外側であり,かつ直線ABから10°隔てた点.回転するマーカーは3次元動作解析装置(Vicon370)を用い,10秒間記録した.得られたデータをもとに Reuleax法,Spiegleman法および回帰直線による方法によりICRを算出した.最後にこれら3つの方法によって算出されたICRの位置と計測されたマーカーAの位置を比較し,3法による算出結果の正確さの比較を行った.なお計測時間は10msec,15msecの2条件にて行った.【結果と考察】各方法で算出された値と計測された回転の中心の誤差は以下のごとくであった.測定時間10msecにおけるReuleax法ではX:平均25.3mm(SD106.4),Y:36.4mm(339.5),Spiegleman法では計算不能,直線近似による方法でX:35.3mm(73.5),Y:29.81(30.0)であった.15msecにおけるReuleax法 ではX:23.1mm(296.7),Y:40.4mm(759.0),Spiegleman法では計算不能,直線近似による方法でX:20.7mm(65.0),Y:11.3(22.0)であった.以上,生体の関節運動を想定した回転運動での計測精度では,回帰直線を用いた方法は誤差の平均値においてReuleax法にほぼ等しいが,誤差の標準偏差ではReuleax法は近似直線の方法に比較し拡大する傾向が示された.これらの結果から,近似曲線による方法の有用性が示唆された.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―