古典的帝王切開創部癒着胎盤の1症例 ‐超音波画像所見の検討‐
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年稀となっている子宮体部縦切開術による帝王切開創部への癒着胎盤を経験したので,本症例での胎盤の超音波画像を中心に報告する.症例は31歳,1回経妊1回経産.前回妊娠は,妊娠26週に緊急帝王切開となったが,子宮筋腫のため下部横切開が出来ず古典的体部縦切開が施行された.今回の妊娠中の超音波検査では,胎盤が子宮前壁の前回帝王切開創部に一致した場所に付着していたため癒着胎盤の有無についての検索を行った.脱落膜に相当すると考えられているlow echoicな帯状エコー(clear zone)が一部途絶しており,また胎盤実質中に複数の無エコー領域(placenta lacunae)を認めたことから癒着胎盤が強く疑われた.妊娠37週3日に帝王切開術を施行し,子宮下部横切開で児を娩出した.胎盤剥離に際し,子宮底部で胎盤の一部が癒着していることが分かった.胎盤が癒着している前回帝王切開創部の子宮筋層を楔状に切除後2層縫合し手術を終了した.輸血の必要もなく順調に経過し退院した.病理検査では,漿膜下4 mmの筋層まで胎盤の侵入を認め,placenta incretaの診断であった.癒着胎盤は前置胎盤に合併することが多く,前置癒着胎盤の診断には超音波画像におけるplacenta lacunaeの存在やclear zoneの欠如が有用であると報告されている.本症例における超音波所見は,体部縦切開創部への常位癒着胎盤でも同様の超音波画像所見が診断の参考になることを示唆するものである.
- 一般社団法人 日本超音波医学会の論文
一般社団法人 日本超音波医学会 | 論文
- 腎泌尿器疾患の超音波診断‐腎細胞癌の超音波像‐
- 左室内腔形態と左室内非同期(dyssynchrony)との関連についての検討
- 硬変肝表面結節像の超音波検査による分類―腹腔鏡検査による肝表面像との比較検討―:-腹腔鏡検査による肝表面像との比較検討-
- 腹腔鏡下手術に腹腔鏡用超音波が有用であった再発粘膜下腫瘍の1例
- 消化管超音波検査が術前診断に有用であった小腸憩室炎の1例