HEART's Original [症例] 冠動脈攣縮による真性心室瘤に発生し心原性脳塞栓と心室頻拍を合併した心外膜下心室瘤の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例は80歳,男性,失神と下肢脱力を主訴として救急来院.72歳時に陳旧性前壁中隔梗塞を指摘され,アセチルコリン負荷試験で多枝冠動脈攣縮が認められたため,梗塞後冠攣縮性狭心症と診断されていた.来院時,心拍数220/分の心室頻拍(VT)を呈しており,VTはリドカイン静注で停止した.また頭部MRI検査で橋,小脳虫部,右小脳半球の梗塞が認められ脳塞栓症と考えられた.心筋逸脱酵素は正常範囲内であった.心エコー図では前壁から心尖部にかけての真性心室瘤が認められ,その側壁との境界に心筋エコーの断裂が検出された.断裂部分は小瘤状突出および収縮期外方運動をなしており,瘤底の心外膜は保たれていた.8日後の再検時には心筋断裂部付近に壁在血栓が観察された.これらの所見より,VTおよび血栓塞栓症を合併した心外膜下心室瘤と診断された.冠動脈造影で狭窄病変は認められなかった.投薬によってVTのコントロールおよび血栓の消失が得られ,約1年間の経過観察において心外膜下心室瘤の増大は認められていない.心外膜下心室瘤の成因として心筋内出血から心筋断裂への進展が考えられており,特に急性心筋梗塞に合併するものでは血栓溶解療法との関連があげられている.今回の症例では冠動脈枝間の分水嶺領域に発生しており,陳旧性梗塞部と健常部との間の折れ曲がりの力や多枝冠攣縮発作時における著しい虚血が心筋断裂に関与したものと推測された.
- 公益財団法人 日本心臓財団の論文
公益財団法人 日本心臓財団 | 論文
- 臨床 発作性上室性頻拍症の自然停止様式
- 症例 急性心筋梗塞を合併した大動脈炎症候群の1剖検例
- 臨床 さまざまな疾患に出現する臥位性期外収縮の分析
- 第46回循環器負荷研究会 特発性心室頻拍の高周波カテーテルアブレーション前後での運動負荷試験に対する反応:電気生理学的検査(心室プログラム刺激)との比較検討
- 症例 2種類の心房周期をもつ慢性心房頻拍の1例