症例 2種類の心房周期をもつ慢性心房頻拍の1例
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概要
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右心房に起源を有する慢性心房頻拍患者に,心臓電気生理学的検査を行い,2種類の心房周期をもつ症例を経験した.症例は,48歳の男性.安静時より心房周期376msec(AT1)の持続型慢性心房頻拍を呈していた.AT1は,ペーシングでは停止不可能で,単発心房期外刺激(SAE)にてリセットが確認され,従来の報告と同様異所性自動能亢進(Auto)によるものと考えられた.一方,心房周期186msecのAT2は,AT1に加えられたSAEにて再現性をもって誘発された.またAT2は心房頻回刺激にて停止しAT1に移行した.AT1とAT2は心房内興奮順序,体表面心電図のP波形より同一起源であった.AT2の機序として,1)AT2の心房周期は,SAEによりAT1の心房周期のほぼ1/2に短縮し,ペーシングによる誘発停止が可能なことよりtriggeredactivity(TA)が示唆された.2)AT2の心房周期がAT1の心房周期のほぼ1/2に短縮したのは,頻拍起源周囲の不応期がSAEにより短縮したために出現した頻拍起源本来の周期と考えられ,AT1はAT2の2:1のexit blockであり,AT1と同様Autoが考えられた.しかし,これら両者の確定的な鑑別には至らなかった.外来経過観察中,ベラパミルとβ-blockerの併用により心房頻拍は停止し,洞調律が維持された.実験的TAの特徴,得られた電気生理学的所見および薬剤に対する作用機序より,AutoとTAの両頻拍機序が共存する可能性も否定できず興味ある症例であった.
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公益財団法人 日本心臓財団 | 論文
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