症例 A-Hブロック出現後も頻拍が持続した房室結節リエントリー性頻拍の1例
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概要
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症例は62歳,女性.主訴は動悸.平成2年より動悸が出現していたが,頻回となるため入院.臨床心臓電気生理学的検査(EPS)では安静時His束心電図に異常を認めず,デルタ波の出現も認めなかった.心房早期刺激では基本周期6 0 0 m s e c 連結期S 1 S 2390msecでA2H2間隔の突然の延長を伴うatrialecho beat(Ae)の出現を認め,連結期S1S2 290msecまでAeの出現が持続した.イソプロテレノール負荷時の心房早期刺激法では連結期S1S2 290msec-180msecの範囲でAeならびに発作性上室性頻拍(PSVT)が誘発された.AeならびにPSVT誘発時に,心房電位の分裂や心房内伝導時間の延長を認めなかった.本症例のPSVTは,最早期興奮部位がHis束心電図のA波にある心房周期300-315msecの頻拍で,房室伝導比3:2のWenchebach型II度A-Hブロックを認めるも頻拍が持続し,ATPならびにveraparnilに停止効果を認めた.房室伝導曲線ではjumping up現象を認め,心房内興奮順序は下位から高位であり,明瞭な心房エコー帯を認め,早期心房刺激の連結間隔とエコー間隔が逆相関していた.心室早期刺激で室房伝導ならびに心房頻回刺激で房室伝導亢進も認めなかった.以上のEPS所見から,房室結節上部のみがリエントリー路に関与し,房室結節内の下位共通路にブロックが生じた房室結節リエントリー性頻拍と診断した.我々が調べ得た限りでは,現在まで3例の本邦報告例を見る比較的まれな症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
- 公益財団法人 日本心臓財団の論文
公益財団法人 日本心臓財団 | 論文
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