臨床 高齢者心臓弁膜症の手術適応:内科の立場から
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概要
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近年注目されている高齢者の診療に関する諸問題のなかで,高齢者心弁膜症の実態についての我々の経験を報告した.特に心弁膜症のために心臓カテーテル検査を施行した高齢者(65~72歳)24例(I群)について通常の基準での手術適応の有無,主な疾患弁,手術が実際に勧められたか,勧められなかったとすればその理由,実際に手術が施行されたか,その経過,などをretrospectiveに調査し,対照として選んだ比較的高齢者(55~64歳)46例(II群)の結果と対比することによって通常用いられる手術適応の血行動態的基準は高齢者においても妥当であるかを検討した.高齢者弁膜症は昭和58年全弁膜症の10%から現在は20%と年々増加している.手術適応のある頻度はI群(79%)がII群(67%)より高かった.I群では男,II群では女が多かった.疾患弁ではI群では大動脈弁,II群で僧帽弁が多かった.手術はI群の適応例のうちの74%に勧められた.これはII群の84%より少なかった.手術適応はあるが手術が勧められなかった理由では両群間に大差はなかった.手術拒否はI群で3例(21%)と,II群(8%)より多かった.術中・直後の死亡は両群に3例ずつ認めた.しかし死亡例を年齢別・術式別にみると,60歳以上の大動脈弁置換術(AVR)に死亡が多かった(U例中5例).死因は両群で大差がないことより年齢が手術のリスクに関連したことを否定できない.手術拒否例の経過はI群二の方がII群より明らかに悪いという傾向ではなかった.冠動脈の有意狭窄はI群2例,II群3例に認め,両群の1例はいずれも術中死したが,冠病変が死因と関連したとは考えられなかった.以上より,高齢者でも(72歳を上限とし)手術を考慮してよいが,その適応決定基準は,特にAVRでは通常より厳しくてよいことが示唆される.
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