症例 Verapamilの経口投与,静脈投与により頻拍発作の増悪をみた潜在性WPW症候群の1例
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概要
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Verapamil(VP)は発作性上室性頻拍(PSVT)の治療に有用であるといわれているが,VPが逆にPSVTの発生を助長したと考えられる潜在性WPW症候群の1例を経験した.症例は51歳の男性で,10年前より頻拍発作があり,PSVTと診断された.昭和57年よりVPを投与されたが,発作回数,持続時間とも,むしろ増加した.VPをprocainamideおよびacebutololに変更し発作はおさまっていた.昭和58年9月,6時間続く発作があり,VPが再投与された.以後再び頻拍発作は増加し終日断続するようになったため,昭和59年12月入院し電気生理学的検討を行った.房室伝導曲線上jump upを認めず,また頻拍中,逆行性心房興奮の最早期部位は左房であったことから左側房室間に副伝導路を有するWPW症候群と診断した.VPの投与前後で,心房早期刺激による発作の誘発を試みたところ,VP投与後,前には存在しなかったecho zoneの出現を認めた.VP投与により,房室伝導時間および房室結節の不応期はともに延長したが,房室結節の不応期の延長(75ms)に比し,房室伝導時間の延長が著明(最高120ms)であったことがかかる結果をもたらしたと考えられる.なおverapamil投与前後で心房不応期は軽度(20ms)に延長したが,室房伝導に遅延を認めず,右室およびKent束の不応期は前後で変化しなかった.以上,われわれはVPが房室回帰性頻拍の自然発生ないし誘発を促進した潜在性WPW症候群の1例について報告した.
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