合同シンポジウム3-5 腸内フローラと生体防御・免疫制御:統合オミクスによる解析
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概要
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われわれの腸内には100兆個以上もの細菌が共生しており,宿主との相互作用によりユニークな「腸生態系」を構築している.われわれは,宿主-腸内フローラ相互作用に基づく腸生態系をより包括的に理解するためにゲノミクス,トランスクリプトミクス,メタボロミクスなどを統合したオミクス手法を考案し応用してきた. 無菌マウスにある種のビフィズス菌を定着させておくと,その後の腸管出血性大腸菌O157投与による感染死を抑止できるが,その分子機構は不明であった.演者らは,統合オミクス手法を応用することにより,ビフィズス菌が産生する酢酸が腸粘膜上皮の抵抗力を増強することで,マウスのO157感染死を予防することを明らかにした.また,ビフィズス菌の全ゲノム比較解析から,O157感染死を予防できるビフィズス菌にのみ存在し,O157感染死を予防できないビフィズス菌では欠失している果糖トランスポーター遺伝子の同定にも成功した.この結果は,統合オミクス手法が複雑な宿主-腸内細菌相互作用の解析に効果的であることを証明するとともに,ビフィズス菌のプロバイオティクス作用のメカニズムの一端を初めて明らかにしたものである. 演者らは最近,統合オミクス手法を用いて腸内フローラが大腸の制御性T細胞の分化を誘導する分子機構も解析しており,この結果もあわせて紹介したい.
- 日本臨床免疫学会の論文
著者
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福田 真嗣
理化学研究所横浜研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター
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長谷 耕二
理化学研究所・免疫アレルギー科学総合研究センター
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大野 博司
理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
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古澤 之裕
理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
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尾畑 佑樹
東京大学医科学研究所 国際粘膜ワクチン開発研究センター
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長谷 耕二
理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
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福田 真嗣
理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
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