子宮頸部リンパ上皮腫様癌の1例
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概要
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子宮頸部リンパ上皮腫様癌(LELC)は子宮頸癌取り扱い規約にて扁平上皮癌の特殊型に分類されているまれな腫瘍である.組織学的には大型で未分化な腫瘍細胞とその周辺の著明なリンパ球浸潤が特徴とされる.今回われわれは,子宮頸部原発LELCと診断した症例を経験したので報告する.症例は52歳,1回経産婦.不正***出血を主訴に近医を受診したところ,子宮頸部細胞診異常を指摘され精査加療目的に当院へ紹介初診となった.術前組織診では大型で未分化な腫瘍細胞が蜂巣状に増殖しており,未分化型扁平上皮癌と診断した.内診および画像所見にて腟や傍子宮組織への浸潤を認めなかったため,子宮頸部stageIb1と診断し広汎子宮全摘術を施行した.術後病理組織標本では腫瘍組織と非腫瘍組織との境界が非常に明瞭であり,腫瘍細胞は大型未分化で周囲には著明なリンパ球浸潤を認め子宮頸部LELCと診断した.子宮頸部LELCは大型で未分化な細胞像を示すものの,比較的発症年齢は低くリンパ節転移やリンパ脈管侵襲を認める症例が非常に少ないために予後良好な腫瘍として知られている.それゆえ,術前に本腫瘍を診断し得るならばより機能を温存し得る縮小手術を行うことも選択肢となり得る.初産年齢の高齢化といった近年の風潮を鑑みると,今後は子宮温存を必要とするケースも増加すると考えられより一層治療前での正確な診断が求められる.また子宮頸部原発LELCは鼻咽頭より発生するリンパ上皮腫と組織学的に類しているとされる.リンパ上皮腫の発癌にEBVが関与していることから子宮頸部LELCの発癌にEBVの関与が示唆されている.今回本症例においてin situ hybridization法を用いてHPV16,18およびEBVの発現について検討したが,いずれも陰性であった.〔産婦の進歩64(1):32-35,2012(平成24年2月)〕
著者
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岩破 一博
京都府立医大
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北脇 城
京都府立医大
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森 泰輔
京都府立医大
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澤田 守男
京都府立医大
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辰巳 弘
京都府立医大
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黒星 晴夫
京都府立医大
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松尾 精記
京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
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