臨床的な自然治癒を認めたリングペッサリーによる直腸腟瘻
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概要
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概要 直腸腟瘻はまれな病態であるが多くは医原性でその対応に苦慮する場合が多い.今回,リングペッサリー使用中に直腸腟瘻を発症し,リングの抜去とホルモン補充療法によってほぼ自然治癒した症例を経験したので報告する.患者は4回経産婦で,76歳時から完全子宮脱でマイヤーリングによる矯正を行っていたが,ペッサリーを圧排するように膀胱瘤が出現し,抜去・再挿入を繰り返していた.80歳11カ月からは試験的にウォーレスリングとマイヤーリングを同時併用したが,膀胱瘤の状態は変わらなかった.81歳9カ月時に強固な便秘が出現し,診察したところ完全子宮脱の状態でマイヤーリングが直腸内に穿孔して腸の長軸方向に垂直に5cmの直腸腟瘻を形成していた.腟後壁は炎症による組織の硬化と発赤が著明であり,外科的処置は困難と考えられたためリングを抜去してエストロゲン補充療法のみで保存的に経過を観察した.排尿障害はなく,脱出した子宮により瘻孔部分が自然に覆われたため便失禁はごく少量で,日常生活に支障をきたさなかった.発症後3カ月で便失禁が消失し,5カ月で内診および直腸診上ほぼ閉鎖となった.直腸腟瘻が結果的にエストロゲン補充療法のみで自然閉鎖に至った理由としては,患者の全身状態が良好で局所に重度の感染もなく,瘻孔からの便失禁が少なかったためと考えられた.またペッサリーによる管理が困難かつ根治手術もできない症例にペッサリーを2個に使用する方法を試用したが,適正な使用を心掛けないと重篤な合併症を引き起こす可能性があると考えられた.〔産婦の進歩64(2):132-136,2012(平成24年5月)〕
著者
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西田 秀隆
京都民医連中央病院産婦人科
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藁谷 深洋子
京都民医連中央病院産婦人科
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西田 秀隆
京都民医連中央病院
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中村 光佐子
京都民医連中央病院
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古板 規子
京都民医連中央病院
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藁谷 深洋子
京都民医連中央病院
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山西 歩
京都民医連中央病院産婦人科
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古板 規子
京都民医連中央病院産婦人科
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