乳癌治療後に妊娠・分娩に至った2例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年,癌治療の進歩によりcancer survivorという言葉が使われるようになってきた.白血病や乳癌など,若年に多い癌のsurvivorの妊孕性と妊娠・分娩・母乳哺育による原疾患への影響について検討した報告は多くない.今回,当院の乳腺外科で治療を受けた乳癌患者で,その後に妊娠・分娩に至った症例を2例経験したので報告する.<症例1>乳腺外科初診時32歳,4回経妊4回経産.第5子妊娠時にPaget病と診断され,分娩後に手術療法を施行された.術後,約2年間トレミフェンクエン酸塩および5-fluorouracil(5-FU)による内分泌化学療法を受けた.術後1年6ヵ月後に妊娠し,流産に至った.術後5年6ヵ月で再び妊娠し,妊娠経過に異常なく妊娠40週で自然経腟分娩した.分娩時には弛緩出血を認めた.産後,乳汁分泌は少なかった.<症例2>乳腺外科初診時28歳,1回経妊1回経産.第1子を経腟分娩し,その6ヵ月後に浸潤型乳管癌(乳頭腺管癌)と診断され手術療法を施行された.術後2年間FEC100(5-FU,epirubicin,cyclophosphamide),さらにweekly paclitaxel療法による化学療法をゴセレリン酢酸塩併用にて施行された.化学療法終了後,ホルモン補充療法を3ヵ月間行った.術後3年4ヵ月で妊娠し,妊娠経過に異常なく妊娠38週で自然経腟分娩した.分娩経過には異常を認めず,産後1ヵ月では完全母乳哺育であった.両症例とも分娩後9ヵ月現在乳癌の再発を認めていない.〔産婦の進歩63(3):301-306,2011(平成23年8月)〕
- 近畿産科婦人科学会の論文
著者
-
藤田 琢史
京都民医連中央病院外科
-
中村 光佐子
京都民医連中央病院産婦人科
-
中村 光佐子
京都民医連中央病院
-
古板 規子
京都民医連中央病院
-
藁谷 深洋子
京都民医連中央病院
-
富永 愛
京都民医連中央病院乳腺外科
-
藤田 琢史
京都民医連中央病院乳腺外科
関連論文
- 骨・軟骨化生を伴う乳癌の1例
- P-2-595 術前診断に苦慮した肝類上皮血管内皮腫の一切除例(肝腫瘍3,一般演題(ポスター),第63回日本消化器外科学会総会)
- P-1-329 狭窄型の肉眼型を呈した回盲部悪性リンパ腫による腸重積の一例(小腸腫瘍1,一般演題(ポスター),第63回日本消化器外科学会総会)
- P-2-737 当院におけるヘルニア嵌頓症例についての検討(ヘルニア4,一般演題(ポスター),第62回日本消化器外科学会定期学術総会)
- 0762 プラスミノーゲン異常症に伴う門脈・上腸間膜静脈血栓症の一例(脾・門脈3,一般演題,第61回日本消化器外科学会定期学術総会)
- 24 難治性イレウスで発症した小腸原発転移性卵巣癌の1例(卵巣 2)
- アポクリン化生細胞の良悪の鑑別が困難であった乳癌の2症例
- 示I-156 結腸静脈石灰化を伴った右側結腸の虚血性大腸炎の1例(第52回日本消化器外科学会総会)
- 卵巣原発と思われるACTH産生悪性腫瘍の1例
- 86 付属器原発と思われるACTH産生悪性腫瘍の1例
- 子宮膣留血腫で判明した膣横隔の1例
- 当院におけるIUGRの分娩誘導
- 骨・軟骨化生を伴う乳癌の1例
- 境界悪性型漿液性嚢胞腫瘍の1例 (学会 研究部会記録 第114回近畿産科婦人科学会第88回腫瘍研究部会記録 テーマ:境界悪性卵巣腫瘍の取り扱い)
- 筋腫分娩・子宮頸管ポリープの再々発と思われた adenosarcoma の2例
- 40 当院における妊婦検診時頸部細胞診について
- P2-9-9 精神疾患合併により慎重な妊娠・分娩管理を要した2症例(Group81 合併症妊娠(症例)1,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-5-1 自然治癒したリングペッサリーによる腟直腸瘻(Group77 女性医学(症例)2,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 症例報告 乳癌治療後に妊娠・分娩に至った2例
- 乳癌治療後に妊娠・分娩に至った2例
- 境界悪性型漿液性嚢胞腫瘍の1例
- 症例報告 臨床的な自然治癒を認めたリングペッサリーによる直腸腟瘻
- 臨床的な自然治癒を認めたリングペッサリーによる直腸腟瘻
- 月経前不快気分障害(PMDD)と診断しその治療中に双極II型障害が顕在化した2症例
- 当院における過去17年間の双胎妊娠に対する分娩管理
- 右胸部に巨大な癌性腫りゅうを形成した外陰癌の1例
- 当院における2500ml以上の分娩時大量出血の検討