Sulbenicillinの抗菌作用による緑膿菌の性状変化について
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概要
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広域合成ペニシリンsulbenicillinにより増殖を抑制されフィラメント状に伸長化した緑膿菌ともとの正常な緑膿菌について形態,生理,病原性などの諸性状の比較実験を行い,次のような成績が得られたので報告する。1. 透過型電子顕微鏡を用いた形態観察ではsulbenicillinの作用により菌体が著しく伸長化し核がひも状に連なつて観察されるが,細胞表層など特に異常は認められなかつた。2. 熱や超音波処理に対して伸長化菌は正常菌に比べ抵抗性が弱かつた。3. Phenol, lysozyme, gentamicinに対して伸長化菌は正常菌よりも感受性が高かつた。4. モルモット腹腔内macrophageによる食菌現象を観察した結果,伸長化菌は正常菌に比べ容易に貪食,殺菌された。5. マウスに対する病原性は,伸長化菌は正常菌に比べ著しく低下していた。6. 菌体内毒素の生物活性については,伸長化菌の方が正常菌に比べ低下していた。以上のようにsulbenicillinの抗菌作用により増殖を抑制され伸長化した緑膿菌は正常菌に比べ,生理的,化学的性状の変化が認められるとともに病原性,菌体内毒素,食菌現象などについても明らかな影響が現われていた。これらの事実は,緑膿菌感染に対する本剤の抗菌作用が,単に直接的な殺菌作用を示すだけではなく,宿主側の細胞性,液性抵抗因子に対する菌の感受性をたかめ,間接的に宿主側の感染防禦効果に好影響を与えていることを示唆している。
- 日本細菌学会の論文
著者
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尾花 芳樹
Microbiological Research Institute Of Otsuka Pharmaceutical Co. Ltd.
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中沢 昭三
京都薬科大学
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尾花 芳樹
京都薬科大学
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中沢 昭三
京都薬科大学微生物学教室
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尾花 芳樹
京都薬科大学微生物学教室
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