ゴマにおけるタバコカスミカメ Nesidiocoris tenuis(Reuter)(カメムシ目:カスミカメムシ科)の繁殖能力
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
野外の餌動物がほとんど発生していないゴマにタバコカスミカメが大発生し世代交代することが観察されたことから,本種はゴマで増殖が可能と推測された.そこで,ゴマでタバコカスミカメは増殖が可能であるか否かを知るとともに,キュウリ,ナス,トマトおよびピーマンでの増殖についても検討した.餌にゴマ,キュウリ,ナス,トマトまたはピーマンの葉を与えた区,それとゴマの葉とともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えた区を設け,タバコカスミカメを飼育し,繁殖能力を比較した.タバコカスミカメの卵から成虫までの生存率はゴマでは59.3%あり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても生存率は有意に高まらなかった.このゴマでの生存率はキュウリを与えた場合と有意差はなかったが,ナスより有意に高かった.また,トマトおよびピーマンでは成虫まで発育した個体は見られなかった.卵から成虫までの発育日数はゴマでは29.0日と,キュウリおよびナスに比較して有意に短かったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると有意に短縮した.成虫の生存日数はゴマで雌が38.4日,雄が27.7日であり,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えても有意差は認められず,ゴマでの生存日数は他の植物と比較して有意に長かった.1雌当たり総産卵数はゴマでは63.6卵であったが,ゴマとともにスジコナマダラメイガ解凍卵を与えると166.4卵と有意に増加した.ゴマ以外の植物での1雌当たり総産卵数は4卵以下で,ゴマと比較して有意に少なかった.ゴマだけを与えた飼育から求めた日当たり内的自然増加率および30日当たり増殖倍率は,それぞれ0.0465および4.0であり,ゴマとスジコナマダラメイガ解凍卵を与えて得た0.0865および13.4に比較して小さかった.しかし,ゴマでは動物質の餌がなくてもタバコカスミカメは増殖できることが明らかになったことから,ゴマはタバコカスミカメのインセクタリープランツとして利用できる可能性が示された.
著者
関連論文
- 日本の絶滅昆虫(第30回)高知県の絶滅昆虫
- 高知県において誘引トラップで捕獲したスズメバチ属の種構成とスズメバチネジレバネの寄生率
- 高知県内の天敵製剤利用果菜類栽培施設で発生した土着カブリダニ種
- A101 クロヒョウタンカスミカメのmtDNAに基づく系統地理学的解析
- A207 広食性土着天敵クロヒョウタンカスミカメに対する数種薬剤と展着剤の影響
- S062 型の異なる2種クサカゲロウ幼虫の防御戦略の差異(小集会)
- D106 シルバーリーフコナジラミを捕食するクロヒョウタンカスミカメムシの発育期間と捕食量に関する研究(一般講演)
- カオマダラクサカゲロウの塵載せ行動のナミテントウに対する防御的機能
- C316 カオマダラクサカゲロウの発育と生存に及ぼす温度の影響(寄生・捕食 生物的防除)
- 富山県における人体寄生虫,とくに当教室寄生虫検査依頼の20年間の推移について
- 10 家屋侵入性カメムシの侵入実態
- A307 ブナ樹洞に棲息するヤブカ類によるトワダオオカからの捕食回避戦略(生態学)
- 殺虫剤展着網の覆いによる家屋侵入性カメムシの侵入阻止実験
- 印刷工場における飛翔性昆虫の侵入阻止の試み
- F109 家屋で越冬するカメムシ類の家屋侵入阻止法(自然・環境保護・家屋害虫)
- 19 ハチアレルギーに関する基礎的研究
- 6 スコットカメムシの飼育法と発育経過
- 13 クサギカメムシとスコットカメムシの潜みの相違
- B-35 最近の富山産コガタイエカ幼虫の有機燐剤抵抗性と季節消長について
- B-32 市販カメムシ用エアゾールの窓枠重点処理によるカメムシの侵入阻止試験
- クサギカメムシの家屋侵入阻止法
- 印刷工場における飛翔性昆虫の侵入実態
- 市販エアゾル剤を用いた窓枠重点処理によるカメムシの侵入阻止実地試験
- 家屋侵入性カメムシ 4 種類の数種殺虫剤に対する感受性
- 20 オオモリハマダラカと北米産 Anopheles barberi の異同について
- 15 スコットカメムシの卵巣発育について
- 6 クサギカメムシとスコットカメムシの多飛来地点の地形的特徴
- 92 富山県下の 1 豚舎におけるハエヤドリコガネコバチ放飼によるイエバエ防除試験
- 26 クサギカメムシの : 対飼育時の日周期活動
- F118 高知市で発生したミノガ類の事例と寄生状況(一般講演)
- D208 土着天敵クロヒョウタンカスミカメの発育に及ぼす温度の影響とピーマン栽培施設におけるタバココナジラミに対する密度抑制効果
- C107 晩秋における野外でのハモグリバエ類の土着寄生蜂の種構成(寄生・捕食 生物的防除)
- 高知県における真夏と真冬のモンシロチョウ
- H226 シモツケ属に含まれる殺虫成分とホシミスジの適応(生理活性物質)
- 高知県内の果菜類栽培施設で発生する数種土着カブリダニのミナミキイロアザミウマに対する捕食能力
- A112 冷蔵・冷凍保存したクサギカメムシ卵に対するミツクリクロタマゴバチの寄生(寄生・捕食生物的防除)
- C116 クサギカメムシの卵に寄生するTrissolcus属3種寄生蜂の発育に及ぼす温度の影響(寄生・捕食・生物的防除)
- 2 インドネシア・スラウェシ島におけるマラリア媒介蚊の発生状況
- オオモリハマダラカ Anopheles omorii の plasmodium yoelii nigeriensis に対する感受性レベル
- 64 オオモリハマダラカの体細胞染色体の検討
- オオモリハマダラカ Anopheles omorii によるネズミマラリア原虫 Plasmodium yoelii nigeriensis の実験的伝播
- 樹洞性オオモリハマダラカ Anopheles omorii の累代飼育法
- 41 オオモリハマダラカにおける鼠マラリアの実験的伝播
- 40 樹洞性のオオモリハマダラカの累代飼育の成功
- 38 蚊の体細胞染色体標本作製法の検討
- 大学研究室紹介 キャンパスだより(20)高知大学農学部 昆虫研究室
- 71 インド, パキスタン産の樹洞性ハマダラカについて
- ハエ類の蛹寄生蜂, ハエヤドリコガネコバチおよびキョウソヤドリコバチに対するピリプロキシフェン, フェニトロチオン, ペルメトリンの影響
- ヒロズキンバエによる傷ハエ症の 1 例
- 37 立山産蚊幼虫諸酵素の電気泳動像
- 炭酸ガスとシフェノトリンの混合ガス(ブンガノン)によるイヨシロオビアブの誘殺
- 89 家屋侵入性カメムシ 4 種類の数種殺虫剤に対する感受性
- クサギカメムシの家屋侵入阻止の試み
- アルミサッシのモデル実験装置を用いたクサギカメムシに対する薬剤の効果判定
- フェノトリン処理網を用いた蚊防除試験
- 土着天敵キイカブリダニによるコナジラミ類の密度抑制効果(一般講演,第16回日本ダニ学会大会講演要旨)
- E206 異なる餌を与えた場合のキイカブリダニの発育および産卵
- 土着天敵ヘヤカブリダニの保護・増強法(一般講演,第15回日本ダニ学会大会講演要旨)
- S053 捕食性カブリダニとタイリクヒメハナカメムシの利用(複数天敵のリレー利用を考える(ハダニ談話会共催))
- D204 キイカブリダニ・タイリクヒメハナカメムシのリレー放飼によるアザミウマ防除
- 試験研究の取り組み 土着天敵の開発状況 (特集 IPM普及最前線)
- キイカブリダニIndoseiulus liturivorus (Ehara)の生態的特性と生物的防除資材としての可能性(第36回ハダニ談話会,あかりノート)
- キイカブリダニの休眠性および冬期の施設ナス圃場における放飼時期の検討(一般講演,第14回日本ダニ学会大会講演要旨)
- S131 キイカブリダニIndoseiulus liturivorus (Ehara)の生態的特性と生物的防除資材としての可能性(小集会)
- 24 樹洞性コバヤシヤブカとエセチョウセンヤブカの卵の孵化刺激について
- イヨシロオビアブ幼虫の生息地について
- 89 イヨシロオビアブ幼虫の分布
- 1 パキスタン国の蚊相について
- パキスタン産 Aedes (Ochlerotatus) cataphylla について
- Oxo-Type Organophosphate-Resistant Acetylcholinesterase from Organophosphate-Unsusceptible Culex tritaeniorhynchus
- Pseudo-Type Acetylcholinesterase from Insecticide-Resistant Culex tritaeniorhynchus
- 12 立山におけるクロバエ類の生態学的研究 : 予報クロバエ類はヒトより先に登山している?
- A-48 「衛生動物」データベースについて(不快害虫など)
- 42 ハエ類の蛹寄生蜂ハエヤドリコガネコバチの大量飼育法の検討
- B-50 クサギカメムシの家屋侵入阻止の考え方(殺虫剤の適用)
- 13 クサギカメムシ駆除に関する 2、3 の基礎実験
- アカイエカ, コガタイエカに対する昆虫成長制御剤ピリプロキシフェンの野外効力試験
- 34 畜舎堆肥溜に処理した昆虫成長制御剤ピリプロキシフェンによるイエバエの駆除効果
- 夏期, 冬期における手術部内微小動物(ダニ)の実態調査と対策
- J212 チャ樹におけるチャノミドリヒメヨコバイ卵寄生蜂の確認とその発生状況(一般講演)
- オオモリハマダラカの各種殺虫剤に対する感受性とエステラーゼ活性
- 36 オオモリハマダラカの各種殺虫剤に対する感受性の相違
- 65 オオモリハマダラカの交尾習性について
- 2010年の高知県におけるクロマダラソテツシジミの発生状況
- 昆虫発育制御剤 4-phenoxyphenyl(RS)-2-(2-pyridyloxy)propyl ether (pyriproxyfen) のネッタイシマカ Aedes aegypti 幼虫に対する作用の組織病理学的検討
- 81 イエバエ総合防除へのアプローチーイエバエに寄生する 3 種寄生蜂の寄生能力
- F307 ナナホシテントウに寄生する捕食寄生者の種構成と寄生率(捕食・寄生・生物的防除)
- ゴマにおけるタバコカスミカメ Nesidiocoris tenuis(Reuter)(カメムシ目:カスミカメムシ科)の繁殖能力
- 土着カブリダニを利用した害虫防除
- クサギカメムシの家屋などへの越冬飛来消長
- 11 クサギカメムシの家屋への越冬飛来消長
- 6 富山県における最近のコガタイエカの発生動向
- 12 中部山岳国立公園立山の観光ルート沿いで発生する蚊類の季節消長 II
- 59 昆虫成長制御剤散布豚舎におけるイエバエ寄生蜂の寄生活動について
- A-53 富山県立山におけるクロバエ類の低地帯と亜高山∿高山帯間の移動について(衛生昆虫の休眠と移動)
- 8 インドネシアのスラウェシ島における蚊の調査(予報)
- 7 中部山岳国立公園立山の観光ルート沿いで発生する蚊類の季節消長
- 中部山岳国立公園立山で多発するクロバエ類のマーキングによる高所移動の確認
- 17 パキスタン辺境バルチスタンにおける蚊相とその発生源について
- 1 富山県における最近のコガタアカイエカの発生状況