馬鈴薯澱粉の流動学的研究 : (第3報) 馬鈴薯澱粉に及ぼす金属イオンの影響
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概要
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馬鈴薯澱粉の流動学的性状に及ぼす金属イオンの影響,並に馬鈴薯澱粉貯蔵中の老化に及ぼす金属イオンの影響について,レオメーター及びBrabender amylographによる粘弾性率の測定, P, Feの定量,分光反射率の測定などの方法により研究した. I. (1) 各種金属塩化物溶液に17°, 2時間処理した馬鈴薯澱粉のBrabender amylogramsにおいて膨潤の阻害効果はCa++, Mg++, Hg++, Fe+++の順に,冷却曲線の粘度上昇効果はHg++, Fe+++, Ca++, Mg++の順に次第に増加していて,多くの膠質液と金属イオンとの関係におけるホフマイスター系列を思わせる.特に,FeCl3溶液処理澱粉は多量の水酸化鉄の沈着のために橙黄色に着色し,Fe+++の配位結合傾向と相まって膨潤能が著しく減少した. (2) 0.1p.p.m. Fe+++溶液処理馬鈴薯澱粉のBrabender amplographによる測定の結果,未処理澱粉より膨潤速度,最高粘度及び冷却時の粘度が高い. (3) 0.1p.p.m. Fe+++溶液処理馬鈴薯澱粉のレオメーターによる測定の結果,新しい澱粉では, 1)糊化直後の冷糊の粘弾性率は未処理澱粉よりやや高く,老化していると認められる澱粉では未処理澱粉より粘弾性率がに著しく低く,膨潤分散度が高い. 2)澱粉糊の放置による糊弾性率の増加は未処理澱粉糊より著しく.ゲル構造が鞏固になる.このことはE. Ott及びJ. H. ElliottのCMCシステムに対するFe+++の関係と相似している. (4) Fe+++溶液処理後透析を行った分離アミロース及びアミロペクチンのP, Fe含量は両者共に馬鈴薯澱粉のアミロペクチン部分に著しく多く, Complex formationのFeの他に,アミロペクチン部分にモノエステルとして存在している燐酸の解離基とのイオン結合状態のFeを推測することが出来る. (5) FeCl3溶液処理澱粉の分光反射率の測定,色解析を行った結果, 0.1p.p.m. Fe+++溶液程度の場合は未処理澱粉と大差はなかったが, 0.5N FeCl3溶液処理澱粉では分光反射率は著しい変化を示し,その色解析値はλdには殆んど変化がなく, Y, Peにおいて著しく変化する.なおこの測定結果から,処理澱粉中のFeの状態についての手がかりは得られなかった. II. (1) レオメーターによる粘弾性率及びBrabender amylogram上に馬鈴薯男爵(千葉県産)から再蒸溜水処理による澱粉の老化並びにその現象が井戸水処理澱粉と著しくことなることが認められたので,前年度測定した再蒸溜水処理澱粉の満1カ年後のBrabender amylogramsを求めた結果,各澱粉とも著しく老化していることが認められた. (2) 古い市販馬鈴薯澱粉についてBrabender amylogramsを求めた結果,老化は認められるが再蒸溜水処理澱粉程著しくなかった.なお各澱粉の1%糊のpHは大差がなかった. (3) 光,酸素,温湿度の貯蔵条件とは別に,用水中に含まれる微量の金属イオンが,馬鈴薯澱粉貯蔵中の老化を抑制するのではないかと思われる.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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