缶煎茶の殺菌中に生成するレトルト臭の生成機構とその防臭対策
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
缶煎茶特有の加熱殺菌臭(レトルト臭)の解明および防臭対策を行うために,各種茶別に缶ドリンクを製造し加熱殺菌中に起こる香気成分の変化をGC, GC-MSにより分析し,またサイクロデキストリンによって防臭効果を検討した. その結果,レトルト臭は煎茶,番茶,玉露茶のみに感じられ,また品質の低い茶ほど強く感じられた.茶香気成分ではcis-3-hexenol, linalooloxide, nerolidol等が減少し, trans-2-trans-4-heptadienal, geraniol, benzylalcoholが増加した. また,β-ionone, 4-vinylphenol, indoleの増加も著しかった. テルペンアルコール類, benzyl alcohol等の増加は,茶浸出液中に溶け出している前駆体である配糖体の加熱分解による新たなる成分の生成により増加したものと考えられ,このような成分変化により茶香気成分のバランスの崩れがレトルト臭の原因となるものと考えられた. これに対し,ウーロン茶,ほうじ茶,紅茶は茶葉中のテルペンアルコールの水溶性前駆体が,製造工程中に発酵や加熱によりすでに分解され浸出液中に存在しないため,レトルト臭が生成しないものと考えられた. サイクロデキストリンによる防臭効果については,サイクロデキストリンの特性によりレトルト臭となる成分が分子空洞内に包み込まれたためにレトルト臭が感じられなかったものと考えられた.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
関連論文
- O-フタルアルデヒト化されたテアニンの高速液体クロマトグラフを用いた定量
- チャの酵素によるパラクマル酸の水酸化
- 茶摘採葉の貯蔵と鮮度--アスコルビン酸を指標として〔茶生葉の貯蔵に関する研究-15-〕
- 茶のビタミンC(酸化型および還元型)の高速液体クロマトグラフによる簡易定量法
- チャ種子の発芽生育に伴うカフェインの変動について
- 茶生葉のCA貯蔵中における茶葉成分の変化〔茶生葉の貯蔵に関する研究-14-〕
- プラズマ発光分光分析法(ICPQ)による茶元素含有量の調査
- プラズマ発光分光分析器(ICPQ)による茶の無機成分分析法の検討
- 烏竜茶と紅茶の香気に関する食品化学的研究
- 茶の滋味に関与するテアニンを中心とした茶樹の窒素代謝
- 放射化分析法の茶業研究への応用
- 紅茶の色素と浸出液の水色について
- 電子スピン共鳴による紅茶の測定
- 茶種による緑茶飲料の香味成分の変化
- 外部から与えた放射性テアニンのカテキンへの取り込み〔カテキン類の生合成に関する研究-2-〕
- 茶浸出液残査(茶殻粉末)の料理への応用について
- 2B-8 チャにおけるカテキン並びに没食子酸生合成に及ぼすしゃ光の影響
- 生育ならびにしゃ光による各種成分の代謝機能の変化〔カテキン類の生合成に関する研究-1-〕
- 2C-2 茶葉ポリフェノールオキシダーゼの細胞内局在性について
- 摘採茶生葉に及ぼすエチレンの影響(ノ-ト)〔茶生産の貯蔵に関する研究-13-〕
- SII-6 紅茶香気成分の生成 : カルボニル化合物とテルペンを中心にして
- 夏茶芽のアミノ酸濃度とアンモニア態窒素の効果
- 茶樹体内でのアミノ酸の消長
- カラムクロマトグラフィによる茶カテキン類の簡易な分離法
- 缶煎茶の殺菌中に生成するレトルト臭の生成機構とその防臭対策