ガスクロマトグラフィーによるビールの中・高沸点含硫化合物の分析
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概要
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(1)ビール,麦汁をジクロルメタンまたは酢酸エチルで抽出することにより得た香気濃縮物を, FPD-GCを用い分析した.ジクロルメタン抽出物からは, 3-メチルチオ-プロパナール(メチオナール), 3-メチルチオープロパノール(メチオノール), 3-メチルチオープロピルアセテート, 2-メチル-テトラヒドロチオフェン-3-オン,ジメチルスルホキシド(DMS0)が検出され,酢酸エチル抽出-メチルエステル化物からは2-メチルチオ酢酸, 3-メチルチオープロピオン酸および2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸のメチルエステルが検出された.これらの含硫化合物のうち, DMSOは今回初めてビール,麦汁中に存在することが明らかにされた. (2)ビール,麦汁中のこれら含硫化合物の定量法を確立し製品ビール中の含量を測定した結果,メチオノールとDMSOは約1mg/1程度と多く,他の合硫化合物は約50μg/1以下の低含量であった. (3)醸造工程中の消長を調べ,以下の結果を得た. 1)メチオノール, 3-メチルチオープロピルアセテート, 2-メチル-テトラヒドロチオフェン-3-オンは麦汁中に存在せず,発酵中徐々に増加して発酵末期にプラトーとなりそのままの含量で製品ビールに移行した. 2)メチオナールは冷麦汁中に25μg/l程度存在するが発酵中に急速に減少し,製品ビール中では1μg/l以下となった. 3) DMSOは仕込開始直後の麦汁中にすでに存在し,冷麦汁中にも1.3mg/1程度存在した.発酵・貯酒工程では大きな変化を受けず,そのまま製品ビールへと移行した. 4) 2-メチルチオ酢酸, 3-メチルチオープロピオン酸は麦汁中にも若干存在するが,発酵工程でもいくぶん増加し貯酒工程では一定値を保った. 5) 2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸は麦汁中には存在しないが発酵中に徐々に増加し,発酵3日目で一度極大に達した後,貯酒4日目ごろまで漸減し以後一定値を保った. (4)各含硫化合物を全種類混合してビール中の平均濃度量またはその10倍量をビールに加えたところ,ビールフレーバーは変化したが硫黄的な酵母臭を再現しうるまでには至らなかった.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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