温州ミカン異常落葉園の現地調査
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概要
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温州ミカンの異常落葉の実態と原因を明らかにするため現地調査を行ない, つぎのような結果を得た。1. 異常落葉にかかつた樹では秋から冬にかけて特有の斑点が発現し, 冬から春にかけて落葉する。また, ほとんどの場合, 根の腐敗が認められる。2. 斑点ははじめ褐色斑点が発現し, のちに赤褐色斑点がみられるようになるが, 赤褐色斑点は褐色斑点を中心として, あるいはその周囲に形成されると考えられる。3. 異常落葉園では葉中のマンガン含量が高く, 100ppm (対乾物重) 程度のところに発現のレベルがあるようにみられる。4. 異常落葉園では土壌の酸性がつよく, 水溶性マンガンが多い。土壌の水溶性マンガンはpHと関連が深く, pHの低下がマンガン可給化のおもな要因と考えられる。易還元性マンガンについては健全園と異常落葉園との間に差は認められない。5. 葉中のマンガン含量は土壌の水溶性マンガン含量と関連があり, 水溶性マンガンが, およそ10ppm以上の園においては葉中のマンガンは100ppm以上となつている。6. 一般に施肥量は多いが, とくに異常落葉園においてはチッソとカリについて多肥で, その反面, 石灰質肥料の施用がなされていなかつた傾向がみられる。7. 以上のことから, 温州ミカンのこの異常落葉はマンガンの過剰吸収によつて生じたものであり, そのおもな原因としては土壌の酸性化によるマンガンの可給化があげられる。土壌の酸性化は施肥法に由来し, また, 多肥が落葉, 根の腐敗などの症状を助長したことと推察される。
- 園芸学会の論文
著者
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矢島 邦康
長崎県総合農林試験場環境部
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神吉 久遠
長崎県総合農林センター果樹部
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浜口 克己
長崎県総合農林センター果樹部
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神吉 久遠
長崎県総合農林センター
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矢島 邦康
長崎県総合農林センター果樹部
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