リンゴ果実の成熟 : (第3報)成熟期の果実成分および品質の変化と相互関係, ならびに内部エチレン濃度との関係
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概要
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リンゴ (‘ゴールデン•デリシャス’,‘スターキング• デリシャズ’および‘ふじ’) の成熟現象を明らかにするため, 成熟期に7〜14日間隔で2〜6回収穫し, 収穫当日またはその後 (15〜20°Cに保持) の果実成分および品質, 収穫1日後の内部エチレン濃度を測定した.1. 収穫時期が遅くなるほど, 果重, 可溶性固形分および非還元糖含量が増加し, 硬度, 滴定酸度が低下し, アルコール不溶性固形分(AIS), デンプンおよび全ペクチン含量が減少した.2. 収穫後7日間に, 可溶性固形分, 非還元糖および還元糖含量が増加し, 滴定酸度が低下し, AIS, デンプン含量が減少し, さらに‘ふじ’以外は硬度が低下した. ただし, 収穫時期が遅い‘ふじ’は非還元糖含量が減少した. AISの減少量はデンプンの減少量とほぼ等しく, さらに‘ふじ’以外はデンプンの減少量が全糖の増加量とほぼ等しかった.‘スターキング•デリシャス’は内部エチレン濃度が高い果実ほど, 収穫後6日間の非還元糖の増加量が少なくなったが, 還元糖の増加量はほぼ一定であった.3. ‘スターキング•デリシャス’では, 硬度は果重, デンプン含量と高い相関が認められ, 重相関では収穫1日後の硬度は果重と, 7日後の硬度はデンプン含量と, より高い相関を示した. 収穫7日後の硬度は内部エチレン濃度とも相関が高かった. 非還元糖, デンプン含量は果重の影響をほとんど受けずに, 内部エチレン濃度と深い関係が認められた.4. 樹上の果実は滴定酸度が低下し, デンプン含量が減少し, 果重, 非還元糖含量が増加している時期に, 内部エチレン濃度の急上昇が起こり, この頃から品質の良好な果実が現れた.‘スターキング•デリシャス’では内部エチレン濃度が高い果実は収穫7日後の硬度が低くなり, 過熟になった.5. 以上の結果から次のように考えられる. 樹上の果実は, デンプン含量の減少に伴う非還元糖含量の増加, 硬度の低下と関連が深い果実の肥大, 着色の増進などの成熟現象がみられる時期に, 果実のエチレン生成が著しく増大し, 果実は完熟する. 収穫後7日間の変化では, 収穫時の内部エチレン濃度が低い果実は, 糖含量が増加し, 酸, デンプン含量が減少しても品質は良好にならず, また逆に内部エチレン濃度が高い果実は過熟となり, 品質は低下する.
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