日本におけるタチバナ (Citrus tachibana (Mak.) Tanaka) の分布とアイソザイム分析
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概要
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静岡県伊豆半島から宮崎県南部の石波までの100本以上のタチバナを調査し, そのアイソザイムを分析した. 多くの木は庭や神社の境内に植栽されたものであったが, 伊豆戸田の山林の群落, 高知県室戸市立岩, 宮崎県串間市石波海岸樹林で野生のタチバナが確認された. そのほか三重県紀伊長島町の豊浦神社では野生と思われるものが存在した. 三重県熊野市, 高知県西部でも野生のものの存在が示唆された. 高知県室戸市佐喜浜や土佐清水市では多くの栽培樹が存在した.アイソザイムの分析ではほとんど全てのタチバナがPx座にCCを持ち, 同座がDDである中国産マンダリンと異なっていた. またGot-2座における対立遺伝子Aは中国産マンダリンには見られず, タチバナに固有であるが, 分析した全ての個体に見られた. また高知県西部, 愛媛県南部及び宮崎県のタチバナの一部はGot-3座にTを持っていたが, これは今まで中国産のマンダリンを含めて他のカンキツ類に発見されていないものであった. 分析したタチバナ集団のアイソザイム遺伝子には栽培されている他のカンキツ品種には見られない不均一性が見られた. 以上の結果からタチバナがキシュウミカン等と共に中国から導入されたとは考え難く, 日本に野生のものであり, 中国大陸のカンキツ類から隔離されて進化したものと考えられた. またこの調査で果実形質がタチバナのそれとは明らかに異なるマンダリンがいくつか見いだされた. これらはアイソザイム分析の結果からキシュウミカンなどの中国系マンダリンとタチバナとの自然交雑樹と推定された. 日本固有の古いマンダリン品種のあるものはこのような交雑樹から選抜されたものと考えられる.
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