臨床分離のプロテウス菌における重金属耐性について

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薬剤耐性を支配しているプラスミドには,水銀,カドミウム,砒素,鉛といった重金属に対する耐性を同時に支配しているものが多数存在することが知られている。これらの重金属耐性菌についてはすでに多くの研究が疫学的,遺伝学的,生化学的な立場からなされている。筆者らも大腸菌,緑膿菌,黄色ブドウ球菌などの菌について,これらの生体に有害な重金属に対する耐性菌の疫学的遺伝学的検討を加え,重金属耐性菌の出現頻度が薬剤耐性のそれと同程度もしくはより高いということ,さらに水銀耐性の大部分がプラスミドによって支配されていることを明らかにした。今回は,1975年から1982年にかけて分離されたプロテウス菌を用いて,疫学的遺伝学的さらには生化学的検討を加えて,つぎの結果を得た。1) プロテウス菌でも他の多くのバクテリアと同様,水銀,カドミウム,砒素に対する耐性値分布はきれいな2峰性のパターンを示し耐性菌と感受性菌に分けることができた。2) プロテウス菌でもやはり重金属耐性菌の出現頻度は薬剤耐性菌のそれと同程度もしくはより高い数字を示した。3) 水銀耐性菌についてみると,120株の水銀耐性菌の89%のものがRプラスミドの上に水銀耐性の遺伝子を持っていた。すなわちほとんどの水銀耐性は大腸菌と同じようにRプラスミドによって支配されていた。4) これらのRプラスミド支配による水銀耐性菌の耐性機構を203Hg2+を用いて調べた結果,すべての菌で培地中からの水銀の気化が認められた。5) 1977年を境に昇汞の使用を中止したことから,それ以前と以後の水銀耐性菌の頻度を比較すると58%から17%へとほぼ3分の1に減少していた。このことから臨床由来株では病院内での水銀剤の使用が1つの選択因子になっているものと思われる。
日本衛生学会の論文

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