日本人の出生季節による日本脳炎感受性についての疫学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
出生季節の分布については,先天性奇形,精神薄弱,精神分裂病などで,正常者と異なることが知られている。しかし,小児期または成人の感染症について,出生季節との関係は知られていない。1948∼64年の東京における日本脳炎流行の際の患者2,831人について,病歴からその出生年月を調べ,出生季節の分布を同年生まれの対照人口(同一コホルト)のそれと比較し,カイ自乗検定(自由度3)によって出生季節と日本脳炎感受性との関係を検討した。1930∼55年に生まれた患者を,その出生年度の日本脳炎の流行程度によって4期に区分して,流行のなかった1930∼34年生まれをA群,同じく1940∼47年生まれをC群とし,また大流行のあった1935∼39年生まれをB群,同じく1948∼55年をD群とした(表1)。発病年齢が0歳および30歳以上のものを除外してから各群ごとに対照群と比較検討した。その結果,A群とC群の患者では共に対照と比べて出生の季節分布に有意の差を認めなかったが,B群とD群では共に対照と比べて有意の差(P<0.05)が認められた。D群については,さらに3歳以下での発病者を除外すると,対照との差はいっそう顕著になった(P<0.001)。大流行年生まれの患者に限って出生季節の分布が対照と異なることは,大流行年の流行期に生まれたものと,同じ年の非流行期に生まれたものとでは,日本脳炎の発病に対する感受性が異なることを示している。このことは,出生前後の時期におこる日本脳炎ウイルスの不顕性感染が,日本脳炎に対する感受性に変化を与え,その変化は長年月に亘って発病率の差として認められるものであることを示唆する。
- 日本衛生学会の論文
著者
関連論文
- 患者の出生季節よりみた糖尿病発症に及ぼす季節的環境要因の影響
- パ-キンソン症患者の性比と出産季節
- 出生季節と寿命
- 出生季節分布の長期的変動と分布の成因の検討
- 齲蝕歯と出生季節
- ハツカネズミの日本脳炎感受性に及ぼすカドミウムの影響
- 歯垢および唾液のう蝕活動性と出生季節
- 永久歯う蝕罹患の3地域での比較と出生季節
- 老人の痴呆と出生季節
- イギリス・レムスタ-における双生児の多発出生とその環境
- 微弱陣痛の季節性と産婦の出生季節との関係
- 生まれ月と思春期--初経について (思春期とからだ)
- 生まれ月と思春期--初経について (思春期とからだ)
- 変化するふたごの出産率 (ふたごの研究)
- 顕在性および潜在性前立腺癌と出生季節
- 桜島の降灰が健康に及ぼす影響の検討 : 疾患の季節分布の比較から
- 日本人の生まれ月--遺伝と環境の接点を探る (日本人)
- 日本脳炎ウイルス接種によるハツカネズミの体内鉛濃度の変動
- 日本脳炎ウイルス感染ハツカネズミ脳におけるマンガンの変動
- ハツカネズミの大動脈内面の肋間動脈分岐部周囲に見られる葉状隆起
- 座長のまとめ (258〜260) (その他の金属)
- メチル水銀の体内蓄積におよぼす日本脳炎ウイルス感染の影響 (第一回毒作用研究会記事)
- 日本人の出生季節による日本脳炎感受性についての疫学的研究
- マウスの日本脳炎ウイルス感受性におよぼす加齢の影響
- 日本脳炎ワクチンの予防効果にみられた出生季節の影響
- 出生季節分布の長期的変動と分布の成因の検討
- 第1位萌出永久歯の変化に関連した顔面頭蓋計測値と乳歯の齲蝕状態
- 幼稚園児にみられた永久歯萌出順序の変化と乳児期の栄養方法及び現在の嗜好との関連性について
- 1900年以前の日本人口における出生の月別分布
- 日本脳炎ワクチンの効力測定法 乳のみマウスの静脈内感染による直接攻撃法について
- タイトル無し