ラットにおけるクロルピリホスの代謝と尿中排泄

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柑橘類,リンゴ,モモ,タバコなどの園芸作物や芝生を食害する昆虫類の駆除に用いられるクロルピリホス(O, O-ジエチル-O-3, 5, 6-トリクロロ-2-ピリジニルホスホロチオエート:CP)は,速効性,残効性にすぐれた有機リン系農薬のひとつである。しかし,CPの毒性が比較的つよい(マウスに対する経口LD50,102mg/kg1))ため,わが国の園芸分野では, LD50値がCPの10倍以上であるフェニトロチオンやクロルピリホスメチルが多く使われ,CPの使用は1985年度において,乳剤(CP濃度,40%)が15トン,水和剤(CP濃度,25%)が370トンにすぎなかった2) 。一方,シロアリ防除用の殺虫剤としては,わが国では長らくの間,有機塩素系殺虫剤のクロルデンが使用されてきた。しかし,1986年9月にクロルデンの使用が禁止されてからは,シロアリ防除作業においてCPの使用が増大している。シロアリ防除作業における薬剤散布は,床下などの狭い場所で行われることが多く,作業形態の点から高濃度曝露が予想される。事実,CPを散布薬剤に使用したシロアリ防除作業者において,血清コリンエステラーゼ活性の低下が観察されており<SUP>3,4)</SUP>,CPの職業性曝露についての関心が高まっている。近年,化学物質の職業性曝露を量的に把握する目的で,尿中代謝物を用いた生物学的モニタリングが盛んに行われている。フェニトロチオンをはじめとする有機リン系殺虫剤についても,主として農業従事者に対して,尿中アルキルリン酸を用いた生物学的モニタリングが試行されている<SUP>5,6)</SUP>。一般的には,ある化学物質について生物学的モニタリングを行うためには,その化学物質の曝露と血中濃度,尿中代謝物濃度との間の量的,時間的関係が明らかでなければならない。しかし,CPの場合,その血中半減期や尿中代謝物の組成,排泄時間についての情報はきわめて少ない。本報告は,CP曝露の生物学的モニタリングを実施するために必要な基礎的知見を得る目的で,ラットにCPを投与して,その血中半減期を明らかにし,さらに代謝物である3, 5, 6-トリクロロ-2-ピリジノール(TCP)とアルキルリン酸の尿中排泄について検討を加えたものである。
日本衛生学会の論文

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