末梢性顔面神経麻痺に対する誘発筋電図検査法の応用
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概要
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著者は末梢性顔面神経麻痺に対する誘発筋電図検査法として誘導電極に2心同心型針電極を用い, おもにM波のSpike数を観察し, さらに閾値, 潜時, 振巾を測定することによって神経線経の変性の程度を推定しようとした. 正常被検者14才から72才までの10例, 及び末梢性顔面神経麻痺患者12才から73才までの53例について本検査法を施行し, さらに10例については病変部位神経の病理組織学的観察を行い, 次の如き結果をえた.<BR>1) 正常者ではSpike数は単一刺激につき10個以上, 閾値は40V以下, 潜時は8msec以下, 振巾は0.1mV以上であった.<BR>2) 誘発筋電図検査成績と病理組織学的所見から末梢性顔面神経麻痺患者に於いては誘発波のSpike数が多い例ほど, 正常な神経線維の数が多く認められた. またspike数は閾値や潜時に較べより詳しく神経の変性の程度を表わしている.<BR>3) この検査法は発病後少なくとも3日以上経過して施行しなければならない.<BR>4) 予後判定についてはa) 誘発波に異常を認めない場合は3ヵ月以内に治癒する. b) 誘発波に異常を認める例は治癒するまでに少なくとも3ヵ月を要し, しかも電極針の刺入の深さによって誘発波のえられない深さのある例は完全治癒の望みは薄い. c) 誘発波が全くえなれない例は完全治癒は期待できない.<BR>著者は末梢性顔面神経麻痺患者で高度の神経変性をきたしていると思われる例の回復過程について次の如く考えた.<BR>a) 下眼窩神経刺激による誘発波はTrigemino-facial-reflexによるものであり, 神経の再生の状態を最も早期に示すものである. b) 三叉神経は顔面表情運動を行なわない状態での顔面の非対称の消失すなわち静的状態での治癒に関与しているが, 表情運動を行なわしめる能力はもたない. c) 口輪筋では健側の顔面神経も麻痺の回復に関与している.<BR>N.E.T. 施行例37例から著者の方法を用いた誘発筋電図検査とN.E.T. の成績より予後を比較した結果, 誘発筋電図検査はN.E.T. に比し発病後比較的早期にも, またある程度経過した例にも価値があり, さらに治癒するまでの期間をより詳しく推測できる点でも最もすぐれた検査法である.
著者
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