不可逆性尿細管壊死により,長期血液透析を行なつている急性ブロム酸中毒の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ブロム酸カリ服用後,無尿・難聴をきたし腎機能の回復が得られず,慢性血液透析を続けている39才,女性の臨床経過と腎生検組織所見を報告する.発病後3カ月の腎生検で,糸球体は正常だが広範な尿細管上皮の変性・壊死を認めた.又多数の尿細管腔内にKossa染色で,黒褐色に染色されるCa沈着物が存在し同部の基底膜はPAM染色にて明らかな断裂像を示した.この様な所見は,他に報告がないが,尿細管がプロム酸塩による直接的障害から不可逆性壊死におちいつたものと考えられ,腎機能障害が持続する事を説明し得る.一般に急性尿細管壊死では上皮は再生され腎機能は回復するとされるが,重篤な例では不可逆性尿細管壊死がおこり腎機能も回復しないと考えられた.腎障害・難聴の外にブロム酸中毒の特徴に,発病後1カ月に発症し, 1〜2カ月で自然軽快する両足趾の火傷様疼痛がある.又多くの例で精神異常を伴うとされ本例でも病初期に性格異常を呈した.長期透析により性格異常はなくなつたので,病初期の精神異常は反応性神経症と考えられた.
著者
-
金津 和郎
兵庫県立尼崎病院 腎臓内科
-
永井 博之
兵庫県立尼崎病院内科
-
桑原 隆
兵庫県立尼崎病院
-
吉田 治義
兵庫県立尼崎病院内科
-
土井 俊夫
兵庫県立尼崎病院内科
-
大橋 博美
兵庫県立尼崎病院内科
関連論文
- 微小変化型ネフローゼ症候群で発症したアミロイド腎症の1例
- 2)房室ブロック房室部頻拍が生じ,アダムス・ストークス発作を伴ったSLEの一症例 : 第38回日本循環器学会近畿地方会
- 大動脈炎症候群の同胞発症例について : 第37回日本循環器学会近畿地方会
- 慢性関節リウマチに対して methotrexate 低用量パルス療法を施行し,汎血球減少症となった維持透析患者の 2 例
- CAPD導入時に陰〓腫大と陰茎浮腫を認めた1例
- 網膜中心動脈閉塞を合併した,lipoprotein glomerulopathyの1例
- 血液透析濾過を行ったIgD型骨髄腫の1例 : 日本アフェレシス学会第18回関西地方会
- 大動脈分岐部に腫瘍栓塞をきたした肺巨細胞癌の2例 : 関西支部 : 第25回日本肺癌学会関西支部会
- 糸球体障害における免疫抑制療法 (糸球体腎炎) -- (腎炎の治療--最近の進歩)
- 不可逆性尿細管壊死により,長期血液透析を行なつている急性ブロム酸中毒の1例
- 各種血中自己抗体が陽性で肝脾腫,汎血球減少, Basedow病を伴い,亜急性細菌性心内膜炎から急速進行性糸球体腎炎を発症した1症例
- 肝性ポルフィリアの続発をみた肝内胆汁うっ滞症の1例
- 悪性リンパ腫(細網肉腫)に伴つた乳酸アシドーシスの1例 : 治療上の問題点と血液透析の有用性
- 橋中心髄鞘壊死を伴い, 血中アンモニア値の著明な日内変動を示した猪瀬型肝性脳症の1例