甲状腺機能亢進症を伴い低血糖症状を呈したインスリン自己免疫症候群の1例
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概要
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甲状腺機能亢進症の再発を来たして1-methyl-2-mercaptoimidazole (MMI)を投与中,低血糖発作を呈し入院したインスリン自己免疫症候群の1例を報告する.症例は50才女性.インスリン使用歴は全くない.構音障害および意識混濁を主訴として入院した.入院時血糖は45mg/dlと低く,耐糖曲線は糖尿病型を示した. TAテストは402×, IgGは3,000mg/dlと高値であつた. PEG法による総インスリンは1,294μU/ml,患者血清インスリン結合能は59%であつた.インスリン感性試験では低血糖不応性を示した. Sephadex G100ゲル〓過法で患者血清中にインスリン結合蛋白の存在を認め,さらに放射性免疫電気泳動法および特異抗血清との血清学的分析よりこれがIgG (K型)であることを証明した.以上から,本例は甲状腺機能亢進症に伴つたインスリン自己免疫症候群であることが確認された.抗甲状腺剤の種類とインスリン結合能との関連をみるとMMIを投与中でも総インスリン, CPR,の変動が認められ, propylthyouracil (PTU)に変更してもインスリン結合能の低下を認めず, MMIの使用との間に必ずしも密接な関連があるとは言えない.甲状腺機能亢進症に伴つたインスリン自己免疫症候群について甲状腺摘出をせずに経過をみた報告は本例のみであり,甲状腺機能亢進症のもつ自己免疫的病因とインスリン自己免疫症候群の病因との関連性について考察を加えた.
- 社団法人 日本内科学会の論文
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