潰瘍性病変を呈した粘膜脱症候群の1小児例
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概要
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小児の粘膜脱症候群の1例を経験した.本症について, 自験例と本邦における15歳以下の粘膜脱症候群の報告例について, その臨床像, 診断, 内視鏡所見, 治療, 予後等について集計した.<BR>症例は, 9歳7ヶ月の男児で, 主訴は, 起床時の下着の汚れと血便.既往歴では, 腸管膜嚢腫, 気管支喘息を認めた.現病歴は, 起床時, 下着に血液の付着を繰り返し認めたため, 内視鏡検査を施行, 直腸内に, びらん・発赤・潰瘍がみられ, 同部の生検による病理組織像では, 間質の鬱血, 円形細胞の浸潤に加え線維増生や, 筋線維の粘膜固有層への増生を認めた.これらの所見と, 臨床症状から粘膜脱症候群と診断した.<BR>本例と本邦での粘膜脱症候群の15歳以下の小児の報告例をまとめると, 年齢は5歳から15歳で, 平均年齢12.3歳であった.性別では, 男児33例, 女児10例で男児に多い傾向が見られた.主訴・主要症状では, 38例中37例に血便, 出血を認めた.しかし, 実際に粘膜脱を認めた例は38例中10例であった.病変の内視鏡所見は, 全体の約69%, 29例が隆起型で, 潰瘍型は9例, 平坦型は1例, 混合型は3例のみであった.病変部位では, 42例中41例が直腸内であり, S状結腸例は1例であった.また, 直腸内病変は前壁17例, 全周性8例, 側壁4例, 後壁3例で, 多発例は3例であった.治療や予後では, 生活習慣, 排便習慣の改善指導を中心とした内科的治療を行った例が9例で, 治癒または改善を認めたものが4例, 不変, 再発例が2例であった.一方, 外科的治療を選択した例は25例であり, 治癒または改善を認めたものが16例, 不変, 再発例が2例であった.以上より, 本邦の小児の粘膜脱症候群は, 男児に, 10歳以上の年長者に多く, 内視鏡学的には, 隆起型が多い傾向がみられた.しかし, 本症例のように, 10歳以下で発症し, 内視鏡病変が潰瘍型である例でも粘膜脱症候群の可能性があるため, 下部消化管の出血, 血便の鑑別疾患として本疾患は重要であり, そうした症例には, 排便習慣などを確かめることが必要であると思われた.
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