有機リン酸エステルによるNiおよびCo抽出時の界面張力

概要

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液膜による分離法を実用化するには膜安定性の解決が必要である.液相分離系での液膜安定性は液液界面現象が複雑に関与するが, 界面張力により評価できる場合も多い.すなわち, 乳化液膜では乳化滴のサイズや分裂・合一はウェーバ数に依存し, 支持液膜では支持体細孔の液膜保持力や液膜中への液液界面の侵入は界面張力に左右される.しかし, キャリア輸送に基づく液膜を通しての溶質透過過程にあっては, 膜両側界面での反応は平衡条件下にあるとは限らず, 非平衡時の界面張力データが必要になる.<BR>液液界面張力は熱力学的物性値として平衡条件下で得られるが, 液抽出過程にあっては一般に界面での反応が重要な役割を果している.抽出反応時の界面張力は動的平衡条件に対応する値として測定できるものの, 必ずしも普遍性のある値ではない.しかし, ある条件下で得られたデータにしても, 関与する液液界面の情報を包括しており, 膜安定性の評価に適用し得ると考えられる.かかる観点から, 本研究では抽出反応時の界面張力を有機リン酸エステルによるNiおよびCoの抽出系で測定し, 平衡条件下で得られた値と比較検討した.