「性行為感染症(STD)の大腸肛門病変」
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概要
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性行為感染症(Sexually transmitted disease:STD)とは、性的な接触を介して感染する疾患の総称であり、病原体としては淋菌、梅毒、クラミジア、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス(HPV)などが古典的なSTDとして知られている。しかし、最近では血中に存在するHBV、HCV、HIV、HTLV-1や唾液、精液などに存在するEBV、CMVおよび糞口感染として知られるHAV、赤痢アメーバなどの新興感染症(emerging disease)もSTDとして注目されるようになってきた。<BR>一方、大腸肛門疾患としてのSTDの頻度は痔核、痔瘻、裂肛などの痔疾患に比して必ずしも多くはないが、近頃の性行動の多様性から明らかに増加傾向にあるので、日常診療において注意しなければならない病変の一つとなっている。七かし、わが国では大腸肛門領域の感染症とくにSTDに関する記載が非常に少ないため、その診断・治療が蔑ろになる傾向にある。また、米国ではAIDSに併発する日和見感染症として大腸肛門病変に関心が寄せられているが、わが国においてぼ報告例がほとんどない。<BR>大腸肛門の専門外来でみられる感染性病変のうち、頻度の高い疾患は以前からカンジダ症、尖圭コンジローマであり、次いで多いのがヘルペス、梅毒である。また、最近ではアメーバ赤痢の増加も注目されている。<BR>しかし、これちの感染症のうち梅毒を除き、容易にSTDと断定できる症例は少なく、その感染経路の判定には難渋する。とくに異性間よりも同性間の性的接触によ,う感染の確認は非常に難しい。演者は感染経路の証明に最も大切なことは、医師と患者間の信頼関係に立った丁寧な問診であると考えている。その結果、地域差はあるものの、わが国においても予想以上に同性間の感染が多いことに驚きを禁じえない。とくに、尖圭コンジローマとアメーバ赤痢にその傾向が顕著である。<BR>いずれにしても、今後も増え続けると思われる大腸肛門領域のSTDについて、正確に理解しておくことは日常診療にとって非常に大切なことである。したがって、今回はSTDの診断と治療に際して把握しておく必要のある代表的な大腸肛門病変の病態について述べたいと考える。
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