麻酔開胸犬の心血行動態および心筋エネルギー代謝に及ぼす塩化レボカルニチン(LC-80)の影響
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概要
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麻酔イヌの生体位心臓標本を用いて,虚血心筋保護効果を有する塩化レボカルニチン(LC-80)を 10mg/kg/min の用量で30分間静脈内に持続投与した時の心血行動態および心筋エネルギー代謝に及ぼす影響について検討した.(1)正常動脈酸素分圧+高FFA血症負荷条件下: LC-80 群における心血行動態および心筋エネルギー代謝はいずれも著変が認められず,コントロール群との間においても明らかな差が認められなかった.(2)低酸素+高FFA血症負荷条件下:LC-80群における心血,行動態はコントロール群との間で有意差が認められず心機能の低下傾向を示したが,冠血流量増加の程度はコントロール群に比較すると軽度である傾向が窺われた.一方,心筋エネルギー代謝に対しては,LC-80 群における乳酸の冠動・静脈血濃度較差の低下はコントロール群に比較すると有意に軽度であった.さらに,心筋酸化還元電位についても LC-80 群はコントロール群に比較すると陰性化の傾向を示さなかった.(3)低酸素+高 FFA 血症+運動負荷条件下:isoproterenol による運動負荷によって心筋のヒポキシアがさらに強くなった状態において,isoproterenol に対する LC-80 群の心血行動態指標(心拍数,左心室内圧,max dP/dtおよび心仕事量)の反応性はコントロール群に比較して有意な差ではなかったがやや良好である傾向が窺われた.一方,心筋エネルギー代謝に対しては,LC-80 群およびコントロール群における乳酸の冠動・静脈血濃度較差および心筋摂取率はいずれも負値を示し,心筋から乳酸が流出していることが窺われたが,その程度はLC-80 群の方が明らかに軽度であった.さらに,心筋酸化還元電位についても,両群ともその値は負値となり強い陰性化の傾向を示したが,その程度は乳酸の場合と同じく LC-80 群の方が明らかに軽度であった.以上の実験結果から,ヒポキシアあるいは運動負荷によって酸素の需給バランスが破綻を来して嫌気性代謝の方向に傾いた心筋に対して,LC-80 は嫌気的なエネルギー生成を抑制してエネルギー代謝を改善させる効果を有する可能性が示唆された.
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