中枢性鎮痛薬Eptazocineのマウス,ラットにおける虚血性脳障害に対する保護効果
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概要
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マウス,ラットを用いた各種虚血性脳障害モデルにおいて,中枢性鎮痛薬eptazocineの脳保護効果について検討した.1)マウス断頭負荷試験,頭部打撲負荷致死試験(20g,30cm)においてeptazocine(3,10mg/kg)は開口運動持続時間,生存時間を各々用量依存的に延長した.2)ラット両側総頸動脈結紮(BLCO)負荷試験においてBLCO処置直後にeptazocine(3,10mg/kg),ethylketo-cyclazocine(EKC,3mg/kg)を投与すると,6時間後の虚血性発作発現率,死亡率および24,48時間後の死亡率に有意な低下を認めた.また,BLCO処置3時間後に認められる脳水分含量,Na/K比の上昇をeptazocineは抑制した.3)マウスBLCO負荷試験においてBLCO処置5,30,120分後の死亡率はeptazocine(3,10mg/kg)の30分前投与により有意に低下した.一方,EKC(3mg/kg)では5分後の死亡率においてのみ改善効果が認められた.BLCO処置2分後に脳エネルギー代謝物の含量を測定したところ,phosphocreatine,ATP含量の減少,AMP,乳酸含量の増加が認められ,ECPは約34%低下し,L/P比は5.8倍に上昇した.これら虚血急性期において認められるエネルギー代謝に関する変化はeptazocine,EKCによって改善されることが認められた.4)マウス脳ミトコンドリア呼吸能のグルタミン酸,コハク酸両基質条件における測定において,eptazocine10mg/kgはState3呼吸活性,呼吸調節率(RCI)を有意に上昇させた.断頭頭部を3分間室温に放置する虚血負荷によるグルタミン酸基質条件のRCIの低下をeptazocineは3mg/kgから有意に抑制した.以上の結果から,eptazocineは虚血急性期の脳障害に対して保護効果を惹起し,その機序の一つとしてミトコンドリア呼吸機能の保護あるいは賦活化を介した脳エネルギー代謝改善作用が関与する可能性が示唆された.
著者
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脇 功巳
日本医薬品工業(株)総合研究所
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脇 功巳
日本医薬品工業
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青城 優
日本医薬品工業(株)総合研究所
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田村 智昭
日本医薬品工業(株)総合研究所
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谷口 登志悦
日本医薬品工業(株)総合研究所
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宮本 鉄雄
日本医薬品工業(株)総合研究所
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