Lead acetate静脈内注射後における血清CaおよびP濃度の変動に関する基礎的研究
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概要
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Lead acetate(Pb-Ac)の静脈内注射(静注)に続いて起こる血清Ca,P濃度の増加機構を解明する目的で実験を行なった.ラットを3群に分け,第1群はPb-Ac 30mg/kg(0.51%水溶液)を静注,第2群はPb-Acとほぼ当量の酢酸基を含むsodium acetate(Na-Ac)16.5mg/kg(0.28%水溶液)を静注して対照群とし,経時的に採血(第1群:30秒〜12時間,第2群:30秒〜2時間)した.第3群については,Pb-Ac静注後の硬組織に対するPb沈着の組織化学的観察を行なった.その結果,Pb-Ac静注に続いて,血清Ca濃度は60分後に最高値(17mg%),P濃度は30分後に最高値(13.5mg%)を示し,60分以後はともに減少し始め,12時間後には正常値に回復した.一方,Na-Ac静注後には血清Ca,P濃度の有意の減少が起こり,両者ともに30分後には正常値に回復した.この現象は,Pb-Ac静注後の血清Ca,P濃度の変動とはまったく異なるものであり,理論的に,注射液の注入による一時的な血液の希釈に由来するものではないかと推定された.そこで,Pb-Ac群とNa-Ac群のそれぞれ対応した時間における血清Ca,P濃度をもとにして,Pb-Ac静注後の各時間帯における血清Ca,P濃度の実際の増加率を算出し,時間経過に伴うその変動を検した.その結果,血清Ca,P濃度の増加率は,Pb-Ac静注直後(0〜30秒)に最高値となり,その後,時間経過とともに減少して行くことが示された.すなわち,この反応にはほとんど潜伏期を必要としないことから,副甲状腺や腎の機能を介した二次的反応ではないことが示唆された.また,Pb-Ac静注直後に,すでに骨表面に対するPb沈着を認めたが,この結果は,Pb-Ac静注に続く血中Ca,P濃度の増加現象が,Pbの骨に対するなんらかの直接作用の結果であることを示唆するものと考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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