傾斜地茶園造成の実態とその環境保全的解析
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概要
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傾斜地茶園の造成が,地域の環境に及ぼす影響をは握するため,わが国茶産地の27府県を対象に,昭和40〜48年にかけて造成された茶園について,その造成方法,造成上およびその後の栽培上の問題点,さらには造成茶園と地域環境との関係を,現地調査およびアンケートにより調査し集約した。<BR>1.昭和40〜48年の間,わが国においては毎年1,000haを越す茶園が造成されたが,その60%は傾斜地で,1ほ場10haを越す大規模ほ場もかなり造成されたが,造成面積の90%は,1ha以下の零細ほ場であった。<BR>またこれらのほ場は,雑木林から茶園への転換が多く,その造成工法は斜面畑造成が最も多かった。さらにこれらのほ場は,標高200〜300mの比較的高いところに多く,傾斜度は5〜10°,傾斜面では南面が最も多かったが,大規模ほ場では二方面以上の斜面方向をもっているほ場も,かなりみられた。<BR>2.全国の傾斜地造成茶園のなかから,1ha以上の造成ほ場106ヵ所を選んで調査した結果,これらのほ場は平均標高約300mの地点で,約10haのほ場が多くは補助事業によって造成され,その多くは雑木林を伐採し,10a当たり約23万円の経費で,1戸当たりの栽培面積は約50aとなっている。<BR>またこれらのほ場は,斜面畑が比較的多く,ほ場区画は不整であるが,1区画20aを越すほ場もある。また幹支線および耕作道を含めた農道配置は,密度,幅員等は良好であるが,舗装率はわずかである。さらに排水系統については明,暗きょを中心に,一応の配置はされているが,地形改造斜面畑の埋土部等重要な部分についての排水計画はずさんである。<BR>なおこうしたほ場に栽植されているチャの品種は,大部分がやぶきたで,うね幅,株間等の栽植様式は,傾斜度が強くなっても,平たん地なみに広い場合が多かった。<BR>3.こうした大規模造成地における土壌保全対策については,園内表層土の流亡に対してはマルチ等の対策が,かなり十分とられているが,法面は不十分で,地形改造斜面畑の埋土部とともに,土砂崩壊しやすかった。<BR>また寒害等の気象災害も多く,標高の高い造成ほ場では寒風害,寒干害,斜面の下部では凍霜害を受けやすいことが,多くのほ場から指摘されている。造成地は概して風当たりが強いので,防風対策の必要な場合が多いが,この調査では実施しているほ場が40%程度であった。<BR>4.こうした茶園造成による周囲の環境への影響は,プラス面とマイナス面が指摘されている。すなわちプラス面については,このほ場造成により経営規模が拡大され,かつ農道の整備等により,省力栽培が可能になると同時に,付近の農業労働の環境をも著しく向上したことなど,地域の環境整備に貢献していることを,多くの地域で認めている。<BR>一方マイナス面についても数多くの指摘があったが,特に造成工法の不備,排水計画の不徹底からくる土地崩壊が,単なるほ場内だけの問題でなく,道路や田畑の埋没など,災害的な事故を起こした例がみられた。<BR>また災害とはいえないまでも,土壌侵食や泥水の流出による河川の汚濁,およびそれが淡水魚類に及ぼす影響なども指摘され,土地,土壌の保全対策が,この場合最も重要であることが判明した。<BR>本調査は27府県におよび広域的な調査であったため,委託場所としてご協力戴いた静岡県茶試鈴木主幹,木村主任研究員,岐阜県農試野原特産科長,石垣主任研究員はじめ,多くの場所の研究者,普及員,さらには市町村職員,農協職員等の労をわずらわす結果となった。この機会にあらためてこ協力戴いた方々に,謝意を表する次第である。
著者
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