偽妊娠家兎における膣腔内遊離細胞の観察
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概要
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偽妊娠は妊娠に類似している点,生殖生理学上きわめて重要な意義を有しているにかかわらず,家兎の偽妊娠に関する研究は非常に少ない.既に著者らの一人は家兎の妊娠時における膣腔内遊離細胞を観察し,顕著な変化が起つていることを報告したが,本研究では偽妊娠のものについて観察を行ない,妊娠のものと比較検討した.膣内粘液の採取については第1図の通りで,膣粘液は不妊性交配後あるいは妊婦尿注射後約4日目まで採取し得たものが多かつた.本研究ではこの期間を第I期としたが,その後粘液は採取できなくなり,この状態が10日間以上継続した(第II期).しかしこの間においても,時折り微量の濃厚乳白色粘液を採取し得ることがあつた.偽妊娠成立後16日頃以降赤茶色から乳白色までの色々な色調の粘液が採取され,やがてこれらは次第に無色透明な正常発情時粘液の状態に復帰した.本研究ではこの期間を第III期とした.つぎにこれら各期における粘液内細胞構成についてみると,正常粘液中には白血球と少数の上皮細胞ならびにきわめて稀に赤血球の浮遊を認める程度であつたが,第I期では大部分の家兎において赤血球数が増加した.第II期では粘液量少なく,生理的食塩水による洗條液の観察では赤血球は消失し,白血球と円形および円柱状上皮細胞,ならびにそれらの崩壊物が認められた.第III期は偽妊娠16日目頃の粘液量増加にはじまるが,粘液内には再び赤血球の混在するものが多く,その出現数は個体による差が甚しかつた.また赤血球と同時に多数の上皮細胞ならびに崩壊物が出現し,特にジンチチウムあるいは多核巨大細胞,線毛細胞を含む大きな細胞塊などが認められた.このような粘液が無色透明な正常状態に復帰するまでに要する期間は個体によりまちまちで,偽妊娠成立後20日前後から30日以上にもおよんだ.なお脱毛営巣し,行動的に明瞭な偽妊娠の状態を示したものは少なかつたが,行動的に必ずしもそのような状態が認められなかつたものでも膣内粘液には明らかに一定の変化が起つていることが知られた.これら膣粘液における変化は妊娠時における変化と酷似しており,また子宮内粘液の膣内への流出状態から子宮頸の緊縮および弛緩の状態もある程度推定し得るものと考えられる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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