エントディニウム属の反芻胃繊毛虫の発酵に及ぼす水素の影響
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概要
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酸素を終末電子受容体とすることができない嫌気性微生物においては,発酵の過程で遊離される電子の処理のされ易さが,発酵能に大きく影響を与え,その結果,生育速度が左右される.反芻胃繊毛虫は,電子処理の重要な方法として,H2を産生するが,このH2生成反応はH2分圧の影響を受ける可能性があると考えられるので,この点を検討した.ヤギの反芻胃から採取したエントディニウム属の混合繊毛虫を供試し,その発酵に対するH2の影響を,48時間の培養実験により調べた.H2を連続的に通気することにより,H2分圧を高くした場合には,N2を通気した対照区よりも,でんぷん消費量および総有機酸生成量が有意に減少することが示された.また,発酵パターンにも変化が認められ,主要産物については,酪酸が殆ど変化しなかったのに対し,酢酸が顕著に減少し,その結果,生成割合では酢酸の減少,酪酸の増加という形となった.次に,繊毛虫が産生したH2を速やかに除去する目的で,メタン菌の共存下で培養を行なったところ,メタン菌の共存区で発酵能が高くなることが示された,すなわち,でんぷん消費量,総有機酸生成量およびH2生成量が増加した,この場合にも,酢酸の比率の激増と酪酸の比率の減少という発酵パターンの変化が認められた.また,ヘキソース発酵量とATP生成量の見積り値から,メタン菌の共存により,発酵能,すなわちエネルギー獲得能力が増大することが示唆され,したがって,生育速度も促進されるものと推測された.しかし,全体的に,繊毛虫に対するH2の影響は著しく大きいものではなかった.これらの結果について,種々の点から考察を加えた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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