マウスの繁殖能力に及ぼす原子炉(JRR-1)照射の影響 : IV. 妊娠マウスに照射した場合の分娩成績および被照射胎児の出生後の成長について
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概要
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妊娠経過日数の異なる妊娠マウスに対して,JRR-1照射を1時間実施し,照射日における妊娠経過日数によって,妊娠1〜4日(Pre.区),妊娠5〜13日(M.Org.区)および妊娠14〜20日(Fet.区)の3期に分けて,分娩の有無,産子数,性比,産児の成長を調べ,次の結果を得た.1. 照射により妊娠を中絶したマウスは,妊娠雌数に対して,Pre.区56.1%,M.Org.区46.4%,Fet.区18.7%,対照区0%であり,妊娠初期の方が後期よりも胎児の消失が多く,特に着床前死亡が多く認められた.2. 平均産子数はPre.区5.1匹,M.Org.区4.7匹,Fet.区5.8匹であり,対照区の5.5匹と比較して差は認められなかった.それゆえ胎児個々に対する影響よりも母体に対する影響の方が大きく,胎児の部分的消失よりも一腹全児を消失する方が多かった.3. 死産はPre.区9.8%,M.Org.区4.2%,Fet.区14.5%,対照区0%で,対照区と比較するとき照射区はいずれも増加が認められたが,照射日における妊娠経過日数による一定の傾向は明らかでなかった.4. 産児の性比の変化は認められなかった.5. 哺乳中(出生より20日令まで)の死亡は,Pre.区39.1%,M.Org.区31.0%,Fet.区23.7%をそれぞれ示し,対照区と比較して高率であったが,照射区相互間では有意差を認めなかった.6. 成長速度については,雄では10gおよび20g到達日数,雌では10g到達日数のみをそれぞれ調べたがre.区の10g到達日数では,雄29.1±2.9日,雌30.6±4.7日で,対照区(雄30.1±3.3日,雌30.8±3.0日)と比較して,少差であるが速い成長を示した.また雄の20g到達日数は,対照区が63.7±9.4日であるのに,Pre.区が62.7±11.7日で速い成長であった.一方M.Org.区,Fet.区では対照区よりも遅く,照射時期が妊娠後半になるのに従って遅くなる傾向も明らかであった.この原因は妊娠初期の照射では,着床前死亡,あるいは着床後死亡により一腹全児が消失することが多く,また出生後も哺乳中に死亡が多く,結果として活力に富むマウスのみが生存し,一方妊娠後期では胎児の消失が少なく,虚弱なマウスも出生し,結果として活力の乏しいマウスが生存していたために,成長速度に差が生じたものと考えられた.7. 奇形は,Fet.区において小眼症と矮小がそれぞれ1匹ずつ発見された.
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