めん羊の採食にともなう体液酸塩基平衡の変動におよぼす静脈内人工唾液注入の影響
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概要
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めん羊の採食時に生ずる体液酸塩基平衡の一時的変動は,反すう動物に特有なNaHCO3含量の高い唾液の分泌が採食開始後に著しく促進されることと関連があるものと考えられる.本報告は,頸動脈ループを装着した体重約40kgの雌めん羊3頭を供試して正常採食時における体液酸塩基平衡の変化を確かめ,次いで採食開始と同時に静脈内に人工唾液を連続注入する実験を行い,採食にともなう一時的なアシドーシス的傾向の発現および尿中無機塩排泄の変動と唾液分泌のかかわり合いを明らかにしようとしたものである.その結果,1) 採食によって血液pHは採食前の7.479±0.006から採食開始1時間後に7.366±0.015となり,約0.1pH単位の著しい低下が認められたが,採食開始と同時に人工唾液を注入したばあいの血液pH変動は最高7.495,最低7.468の範囲内にとどまり,人工唾液注入が採食にともなう血液pH低下の抑制に著明な効果をあらわすことが明らかになった.2) 正常採食時の血漿HCO3濃度の低下はpHと同傾向の変化を示して19.6±0.5mEq/1(採食前)から15.3±0.5mEq/l(採食中)に減少した.人工唾液注入は採食中のHCO-3濃度の抵下をおさえる効果をあらわし,注入時の変動は21.6±1.0〜20.5±0.8mEq/lの範霞内にとどまった.3) 採食中に血液Pco2の変化はみとめられず,また,人工唾液を注入したばあいにも血液Pco2には変動は認められなかった.4) 採食開始後の尿pH低下,尿HCO3-濃度低下,Pco2低下などの尿酸性化を示す傾向は人工唾液注入によって明らかに緩和された.5) 採食中のアシドーシス的傾向が直接あるいは間接的にもたらしたと考えられるNH4+,Ca++およびMg++の著しい尿排泄増加は,人工唾液注入によってアシドーシス的傾向の発現が抑制されるときその排泄増加も抑制された。
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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