胚から母体へ : −ブタにおける母体の妊娠確認−
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概要
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ブタは多胎動物であり,産子数は10頭前後である.妊娠初期の子宮内に最低何個の胚(受胎産物)があれば,妊娠が成立し得るのか? 最低4個の胚が必要だとも,また,1個の胚では妊娠が成立しないものの,2個では可能であり,そして,2個より3個の胚で受胎率が向上するとも報告されている.このことは,妊娠初期の子宮内に複数の胚が生存して,一定量以上の何らかの信号物質を産生して母体へメッセージを送って,妊娠成立に至ることの証明とも言える.ブタの母体による妊娠認識に関与する受胎産物由来の物質として,エストラダイオール-17β(E 2)が第一義的に上げられている.受胎産物が子宮内で伸長を開始する時期に,トロフォブラストが産生・放出するE 2は,母体の妊娠認識にとって,最初の信号物質であろう.受胎産物からの黄体維持的な信号は,妊娠の12日目には産生されなくてはならず,その信号が有効に活用するには,受胎産物が両子宮角内に伸長している必要がある.ブタにおいても他の家畜と同様に,子宮内膜由来のプロスタグランディン(PG)F 2αが,発情周期での黄体退行を引き起こす.PGF 2αの産生と分泌の方向が妊娠認識の時期では重要である.一方,PGE 2は黄体機能促進的役割を果たすとも考えられている.妊娠認識は,子宮内の受胎産物の存在に対して,母体が反応する種々の手段の結果である.種々の物質がどのようなメカニズムでブタの妊娠認識に関与しているのか,そして黄体維持への信号の流れは,依然謎が多いままである.ブタの妊娠認識について,1)受胎産物によるE2産生,2)受胎産物および子宮内膜でのレチノール結合タンパク質の産生,3)子宮内膜由来のPGE 2およびPGF2αの分泌方向,4)受胎産物の産生するタンパク質について言及したい.
- 日本繁殖生物学会の論文
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