改良型アデノウイルスベクターの開発と神経系細胞への遺伝子導入
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概要
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1970年代後半からの分子生物学の顕著な進歩を背景に,これまで不明であった様々な疾患の原因が,遺伝子やタンパク質のレベルで解き明かされる時代となってきた.そして今日では,明らかとなった疾患関連遺伝子情報を元に,今までに効果的な治療が望めなかったような難治性疾患に対する遺伝子治療研究が精力的に行われている.しかし,遺伝子治療の実用化には依然多くの問題が残されており,特に安全に効率よく治療用遺伝子を標的細胞に導入可能なベクターの開発が最重要研究課題となっている.アデノウイルス(Ad)ベクターは,既存の遺伝子導入用ベクターの中では最も高い遺伝子導入効率を示すなど,遺伝子治療用ベクターとして多くの長所を有することから,遺伝子治療臨床研究で広く用いられている.しかしながら,Adベクターの抱える問題点として,1)Coxsackievirus and adenovirus receptor(CAR)を受容体とし感染するため,CAR陰性細胞(樹状細胞や悪性度の高いがん細胞など)への遺伝子導入が困難であること,2)生体内に投与した場合,Adベクターからわずかに産生されるウイルスタンパク質に対する細胞障害性T細胞が誘導され,組織障害が生じることなどが挙げられる.これらの問題を解決するために,これまでに様々な改良型Adベクターが開発されてきた.本総説の前半では,主な改良型Adベクターを紹介し,後半では,Adベクターを用いた神経系細胞への遺伝子導入ならびに神経疾患・神経膠腫(グリオーマ)の遺伝子治療について最近の報告を織り交ぜて述べることにする.
著者
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水口 裕之
大阪大学 大学院薬学研究科分子生物学分野
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松井 勇人
大阪大学 大学院 薬学研究科 分子生物学分野
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櫻井 文教
大阪大学 大学院 薬学研究科 分子生物学分野
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形山 和史
大阪大学 大学院 薬学研究科 分子生物学分野
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