腹水を伴う肝硬変合併腎不全に腹膜透析を導入した2例 : ―日本における報告例のまとめ―
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
肝硬変非代償期は慢性肝疾患の終末像であり,生命予後に影響する.腹水を伴った肝硬変合併腎不全例に対して腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis:CAPD)の有効性が指摘されているが,長期的な影響に関する検討は少ない.今回,われわれは腹水を伴う肝硬変合併腎不全にCAPDを導入した2例を経験した.1例は49歳,男性,難治性腹水を伴ったC型肝炎に伴う肝硬変,移植腎不全例であり,導入時,低ナトリウム血症,低アルブミン血症,低血圧を認めた.塩分摂取の増量,分岐鎖アミノ酸による蛋白摂取の増量を行ったが,循環亢進状態に伴う低血圧が遷延した.導入16か月目,腹膜炎発症後から血圧維持が困難となり永眠した.2例目は74歳,男性,腹水を伴う原因不明の肝硬変,糖尿病性腎症による腎不全のためCAPD導入.導入40か月目,食道静脈瘤に対する硬化療法後から頻回にE. coliを主体とする腹膜炎を発症し,特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis:SBP)と診断した.腹膜硬化症合併が懸念され血液透析へ移行したが,肝不全の増悪から永眠した.肝硬変合併例に対するCAPD治療の選択を考える上で貴重な2症例と考え報告するとともに,これまで本邦で報告された15例をまとめて,肝硬変合併例におけるCAPD治療の利点と欠点に関して考察を加えた.
著者
-
中川 卓
金沢医科大学腎機能治療学
-
木村 庄吾
金沢医科大学腎機能治療学
-
藤本 圭司
金沢医科大学腎機能治療学
-
渥美 浩克
金沢医科大学腎機能治療学
-
井村 淳子
金沢医科大学腎機能治療学
-
近沢 芳寛
金沢医科大学腎機能治療学
-
奥山 宏
金沢医科大学腎機能治療学
-
山谷 秀喜
金沢医科大学腎機能治療学
-
浅香 充宏
金沢医科大学腎機能治療学
-
横山 仁
金沢医科大学腎機能治療学
関連論文
- 腹水を伴う肝硬変合併腎不全に腹膜透析を導入した2例 : ―日本における報告例のまとめ―
- 糸球体疾患に伴うARF・AKI (特集 AKI・急性腎不全)
- 糸球体腎炎に伴う急性腎不全 (特集 腎不全を診る) -- (診療の実際)
- 経口ビタミンD_3ならびに静注ビタミンDアナログ製剤による二次性副甲状腺機能亢進症に対する層別治療の検討
- 肺出血を伴った急速進行性糸球体腎炎の1例
- Rituximab が著効したIgM型抗PS/PT抗体陽性の抗リン脂質抗体症候群の1例
- 当院における過去30年間のループス糸球体腎炎の臨床病理学的検討
- C型肝炎ウイルス陽性患者の腎移植後に Fibrosing Cholestatic Hepatitis を発症した1例
- 30年間における腎移植260例の経験
- 移植腎に発症したBKウイルス腎症の1例
- 経過中に腹部大動脈血栓を併発し, 両側下肢切断に至ったネフローゼ症候群の1例
- HCV陽性腎移植患者の頻度と臨床的意義について
- MRアンギオグラフィーにより脳動脈瘤の家系内発生を検出しえた多発性嚢胞腎の一例
- ネフローゼ症候群を伴うループス腎炎 (特集 難治性ネフローゼ症候群)
- ループス腎炎病理診断の新しい分類 : ISN/RPS 2003年改訂分類の要点と診断マニュアル
- 類リンパ性肉芽腫症の下垂体茎浸潤による中枢性尿崩症
- 冠動脈造影による造影剤腎症に対する予防的持続血液透析の有用性に関する検討
- 腎臓専門医への紹介のタイミング
- ネフローゼ症候群治療の進歩 : 成人領域
- 診断と治療の実際 呼吸器疾患と腎臓 (特集 全身性疾患と腎臓病)
- 腎障害を引き起こす薬剤と副作用発見のポイント (特集 薬剤副作用の早期発見) -- (早期発見のポイント)
- ネフローゼ症候群におけるアフェレシス療法(腎・血液領域の注目すべき疾患-アフェレシス療法のエビデンスとガイドライン-)
- メタボリックシンドローム腎症はあるか? (特集 メタボリックシンドローム・ムーブメント--分子から実践へ)
- 薬物性腎障害診断のアプローチ (第1土曜特集 薬物性腎障害)
- 腎障害治療に用いられる免疫抑制薬とその適応
- ケモカインと腎線維化--病態への関与と治療戦略の構築
- Heparin induced thrombocytopenia (HIT) type 2を生じた血液透析例(第21回関西地方会抄録)
- S-10-5 抗プロトロンビン抗体陽性抗リン脂質抗体症候群に対するアフェレシス療法
- カテコラミン産生グロムス腫瘍の1例
- 44) 腎血管性高血圧の血圧日内変動と心拍変動解析
- 急速進行性糸球体腎炎症候群(RPGN)の病型におけるMCAF/MCP-1の意義
- 178) 生体腎移植後早期に移植腎動脈狭窄が出現し経皮的血管形成術が有効であった一例(第122回東海・第107回北陸日本循環器学会合同地方会)
- 腎移植11年後に発症し Azathioprine の中止により改善した肝中心静脈閉塞症と思われる1例
- 内シャント狭窄に対するparallel wire techniqueの有用性についての検討
- 術後12週目に透析より離脱し移植腎の生着を見た死体腎移植の1例
- B型肝炎ウイルス保因者の巣状糸球体硬化を伴った膜性腎症に対するインターフェロン治療の効果
- 20年後に再発し,副腎皮質ステロイド,シクロスポリン併用療法が著効した高齢者微少変化型ネフローゼ症候群の1例
- 腎動脈造影下CTが診断に有用であったレニン産生腫瘍の1例
- 腹水を伴う肝硬変合併腎不全に腹膜透析を導入した2例 : 日本における報告例のまとめ
- ネフローゼ症候群に対するリンパ球除去療法の検討 : 日本アフェレシス学会第18回関西地方会
- 血漿交換療法が有用であった血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の2例
- C型慢性肝炎に対する二重濾過血漿交換療法を用いたウイルス除去療法(VRAD)(アフェレシスの新しい適応をめぐって)
- 進行性腎線維化にはたすMCP-1-CCR2の役割と治療戦略への応用
- ケモカインからみたリウマチ性疾患における腎障害
- 潜行型半月体性糸球体腎炎に対するステロイドパルス療法の有用性
- 抗ケモカイン療法による炎症制御の可能性 : 腎炎を中心として
- 腎疾患とケモカイン (特集 免疫疾患とケモカイン--分子標的治療の可能性を探る)
- 急性腎炎と急速進行性腎炎 (特別企画 腎臓の病気)
- 劇症型A群レンサ球菌感染症の一例
- P071 腎機能障害患者に対するPTCA時のcontinuous hemodiafiltration (CHDF)の有用性
- 糸球体疾患に伴うARF・AKI
- 最新の薬物治療
- 検尿の評価と意義 (特集 CKD--早期介入の意義と期待効果) -- (診断)
- 透析患者の腎画像診断の考え方 (特集 腎機能と画像診断)
- ネフローゼ症候群 (新版 処方計画法) -- (腎・尿路系疾患)
- セミナー 慢性腎臓病患者への薬剤治療に関する注意点
- 慢性腎臓病と検尿
- 食事療法--ネフローゼ症候群 (腎臓病のすべて) -- (腎臓病の治療)
- ループス腎炎の診断と治療
- Ganciclovir が原因と思われる膜性腎症様ネフローゼ症候群を来した生体腎移植後の巣状糸球体硬化症(FGS)の1女児例
- 序説
- 難治性ネフローゼ症候群における臨床病理学的研究 : 膜性腎症を中心に
- 基礎 腎疾患における細胞性免疫の果たす役割 (特集 腎疾患の基礎と臨床の新しい展開)
- Sjogren症候群 (特集 全身性疾患と腎障害) -- (全身性疾患に伴う腎障害の診断と治療の実際)
- 腎疾患とケモカイン
- ネフローゼ症候群診療指針
- ネフローゼ症候群を伴うループス腎炎
- 高齢者ネフローゼ症候群の病像と治療 (特集 腎疾患診療の最前線)